研究課題
がん移植モデルを用いた生体内での代謝中間体検出によるメチオニン代謝の位置情報を加えた生体内経時変化の解析H26年度は、動物免疫不全マウスを宿主にヒト大腸がん細胞株(hct116)を移入して肝臓に転移巣を形成させた担がんモデルを作成し、担がん組織の新鮮凍結切片から、メチオニン由来のメチル基を持つ代謝物を検出するための検討を行った。動物モデルの組織切片から、代謝物を直接質量分析で検出するためには、目的の代謝物に最適なマトリクスの選択、イオン化条件の検討などが必要となる。例えば、メチオニンの代謝産物で、生体内のメチル化における唯一の基質であるSAMは、分子内にプラスの電荷を持っており、MALDI-MSによる組織からの直接質量分析が比較的容易である。しかし、メチオニン由来のメチル基が取り込まれる代謝物は多岐にわたっており、それぞれの代謝物をモデル動物の組織切片から最適な条件で検出するための検討を行った。メチオニン由来の代謝物を組織切片から直接検出するのと同時に、動物個体間の比較を行うためのCE-MSを用いた各代謝物の定量を、厚く切った隣接切片を用いて行った。各代謝物について、定量値と質量イメージングで得られた組織切片内の位置情報をもつスペクトル情報を合わせて、局所での各代謝物の推定含有量を算出し、メチオニン由来のメチル基をもつ代謝物の半定量的質量イメージを作成した。結果はNitric Oxide (2015) 46:102-13に発表した。
2: おおむね順調に進展している
H26年度は、ヒト大腸がん肝転移モデルを用いて、肝臓とがん転移病巣におけるS-アデノシルメチオニンとS-アデノシルホモシステイン、及び、ポリアミン類の分布を明らかにし、CE-MSによる定量結果と合わせた上でメチオニン由来のメチル基をもつ代謝物の半定量的質量イメージを作成した。結果はNitric Oxide (2015) 46:102-13に発表した。
最終年度は、H25年度、H26年度に得られた結果をふまえて、動物モデルに安定同位体標識したメチオニンを投与し、メチオニン由来のメチル基の取り込み先、掲示変化を明らかにする。
今年度は、担がんモデル動物を用いて、質量イメージングによる内在性メチオニン由来の代謝物の計測を重点的に行い、担がん肝の組織における、S-アデノシルメチオニンとS-アデノシルホモシステインの分布を明らかにし、論文発表を行なった。一方で、高価な安定同位体標識化合物を動物に投与する大規模な解析は今年度に実施することが出来なかったので、安定同位体標識化合物の購入費用は、次年度に使用することになった。
H27年度は、安定同位体を用いたin vivoの投与実験を予定しており、動物購入費用、動物飼育費用、動物に投与するための安定同位体標識化合物の購入費用が必要であるため、当初H27年度に予定していた額よりも多くの消耗品費を要する。
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