研究課題/領域番号 |
25513013
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
伊達 沙智子 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, リサーチアソシエイト (60649747)
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研究分担者 |
升島 努 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, チームリーダー (10136054)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 一細胞分析 / 分析の効率化 / 薬剤肝毒性の評価 |
研究概要 |
平成25年度は「一細胞・組織In-Situオンタイム薬物代謝解析法」の開発のために、基本的な測定環境の整備、および薬物に代表される測定対象化合物を分析するための基本的な技術・手法の確立に取り組んだ。 測定環境の整備に関しては、ラットの凍結組織切片からサンプリングを行う全自動ロボットの動作設定を行った。エンジニアと協力し、サンプリング用のナノスプレーチップをロボットアームの先端に取り付けたのち、顕微鏡の視野にチップの先端を移動させ、顕微観察下の特定の細胞の成分を吸引するという一連の動作の設定に成功した。また、ロボットと手動マニピュレーターの接続を行い、繊密な動作が必要な際はこれを用いることとした。以上により、すべて手動で行っていた以前の実験よりも簡易かつ迅速なサンプリングが可能となった。 また、組織切片の分析の前準備としてラット初代培養肝細胞を用いて薬物惹起性肝臓毒性の評価を一細胞分析で行う方法を検討した。この研究では薬物を投与したラット初代培養肝細胞の一細胞成分を吸い上げ、薬物および肝臓に対して毒性を発現する反応性代謝物および細胞の機能維持に重要な役割を果たす内因性化合物の検出に成功した。薬物投与によってこれらの内因性化合物の存在量は有意に変化しており、一細胞分析を用いて薬物惹起性肝毒性を評価することに成功した。新薬開発において薬物の肝毒性は頻発する非常に大きな問題であり、わずかな組織や細胞を用いてこれらを評価することができれば、創薬研究の効率化・迅速化につなげることが出来る。本研究で得られた成果は米国質量分析学会年会、日本毒性学会学術年会、日本質量分析学会総合討論会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初動物実験を行う予定であった大阪大学の施設が閉鎖したため、動物への薬剤投与、切片作製の方法の検討は十分に行えなかった。しかし過去に収集した組織切片を用いて、分析のためのロボットの設置やナノスプレーチップを用いた分析法の検討などは進めることができた。また初代培養肝細胞を用いた研究により、薬物の惹き起こす肝毒性を一細胞分析で評価できるという新たな知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
動物から採取した組織切片から一細胞成分をサンプリングし、質量分析を行うための基本的な分析条件の検討を行い、再現性・定量性の確保を目指す。測定対象となる分子は多岐に渡るため、最初は薬効発現および毒性発現のメカニズムが明らかな薬物を用いてこれらの検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していた動物実験が施設閉鎖などの理由により、動物の購入費用や飼育費用が必要なくなったため、次年度へ繰り越した。 動物の購入・飼育費用、組織切片からサンプリングするための装置の製作に使用する予定である。
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