昨年度に引き続き、一細胞分析を高感度に定量的に分析する手法の開発を中心に行った。 昨年度は一細胞の分析にフーリエ変換型質量分析計LTQ orbitrap Velos(Thermo社)、トリプル四重極型質量分析計QTRAP5500(ABSCIEX社)の両方を用いていたが、今年度は既知の薬物・薬物代謝物および内因性化合物の定量分析に絞った分析を行うためにQTRAP5500を使った解析法の改善を中心に行った。 薬物(タモキシフェン)を投与した際に起こる薬物の代謝反応、および肝臓細胞内で起こる毒性発現を一細胞から得られたデータで分析できるように、測定のターゲットとなる分子の情報を過去の実験データや文献から収集し、約40分子を一度に定量する測定系の作成を目指した。 各化合物の検量線を作成するために内部標準物質として13C、15Nなどで安定同位体標識体された種々の試薬をを購入した。安定同位体ラベル体を一定量各濃度の標準液に添加し、インフュージョンによりMRMを設定したのち、ナノスプレーチップで細胞内因性の化合物を分析する際の検量線の作成を行った。 その結果、化合物ほとんどは定量的に分析できるものの、中にはバックグラウンドが大きく検出量と濃度に相関が見られないものもあった。このうち質量分析装置の設定変更により定量性が改善したものもあったが定量が不可能な化合物もいくつかあった。 薬物およびその代謝物に関してはほぼ問題なく定量できることがわかった。一細胞で薬物代謝や薬物投与により細胞内で発現する毒性を検出する測定系の準備が整った。
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