研究課題/領域番号 |
25514003
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
茶谷 昌宏 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (80628628)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙 / メダカ / 破骨細胞 / 骨量減少 / 微小重力環境 |
研究実績の概要 |
国際宇宙ステーション内にある日本実験棟“きぼう”において、微小重力環境下で約2カ月間のメダカ飼育実験を行い、骨と骨の細胞にどのような影響が生じるかを調べた。メダカは遺伝子組み換えによって骨を壊す破骨細胞を緑色に、骨を作る骨芽細胞を赤色に光るトランスジェニックラインを用いた。微小重力が生体に与える影響についての考察を目指した。メダカの喉にある咽頭歯とよばれる数百の歯が代謝される組織に着目して解析した結果、咽頭歯骨のミネラル密度が減少していることが明らかになった。その原因を明らかにするため、破骨細胞と骨芽細胞の光を追跡した結果、破骨細胞の体積割合が顕著に増加していることがわかった。次に核の数を計測したところ、多核の成熟破骨細胞の割合が増加していることが示された。さらに、そのメカニズムを調べるため遺伝子の発現レベルが宇宙での飼育でどのように変化したのかを調べた。その結果、微小重力に特有のストレス環境下で発現が上昇するいくつかの遺伝子群を同定することができた。さらに、微小重力下におけるメダカの行動をビデオ撮影して解析した結果、微小重力特有の逆さま泳ぎ、立ち泳ぎ、回転泳ぎが確認された。交尾行動も観察され、メダカが微小重力環境に適応したことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
宇宙実験のサンプルは回収に6か月かかり、地上対照実験も宇宙実験の条件に合わせて実施されたことなどからも宇宙実験の解析開始に遅れがみられた。しかしながら長期実験の解析は一通り終えることができ、得られた結果を論文にまとめ上げた。現在Submitしており、リバイス実験の準備をするなどの点では順調である。
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今後の研究の推進方策 |
長期宇宙実験から、微小重力下では特有のストレスが細胞に影響を与えていることが示された。これからその実態を明らかにしていく。また、短期宇宙実験からは遺伝子の発現変化が多く見られた。この短期間における重力のキャンセルによって細胞にどのような変化が生じたかを考察することで生命現象における重力の意味を考えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の執筆を重視したため使用額が予定より少なくなった。これからリバイス実験が想定されるため、それに余力を残したかった。
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次年度使用額の使用計画 |
宇宙長期論文のリバイス実験に用いる。宇宙短期実験の解析に用いる。
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