研究課題
植物の茎は重力の力に抵抗するために強固な体を構築し、耐倒伏性の獲得や姿勢制御を行っている。これまでに、植物の重力に抗う体作り (抗重力形態形成) の発現に、植物ホルモンの関与が示唆されてきたが、植物ホルモンと抗重力形態形成の関わりの大部分が明らかになっていない。本研究では、シロイヌナズナ花茎が重力を感受して抗重力形態形成を発現するまでの各段階において、植物ホルモンの生合成や応答がどのように関与するかを明らかにすることを目的に研究を実施した。本研究ではシロイヌナズナ花茎の茎頂特異的なブラシノステロイド(BR)生合成の重力依存性の解明と、シロイヌナズナ花茎の直立・倒伏や二次細胞壁形成に対するBR依存性の解明を目標とした。野生型シロイヌナズナの花茎に外生BR処理およびBR生合成阻害剤処理を行い、花茎の生長と剛性の変化を定量した結果、BR濃度依存的に茎の剛性が変動することが明らかになった。また、花茎の茎頂や基部の二次細胞壁の変化のBR依存性を定性的に評価するために、花茎の部位別横断面の細胞壁染色を実施した。これらの結果から、細胞壁構築や剛性維持にBRが重要な役割を果たすが示された。一方、我々はこれまでの研究で、伸長領域の決定および重力屈性にAuxinとBRが協調的に働くことを示してきた。これらが抗重力反応にどのように関与するかを解明するため、過重力処理した花茎を先端部と基部に分け、遺伝子発現量を測定した。この結果、BR生合成酵素遺伝子の発現量からBR量が変化している証拠は得られなかったが、BRとAuxinの両方に応答するAux/IAA1が先端部で、Aux/IAA19が先端部と基部の両方で発現量が有意に減少していた。これらの結果から過重力処理に応答した抗重力反応において、BRとAuxinが協調的に働く可能性が示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1080/09168451.2017.1313694.
Plant Cell Physiol.
10.1093/pcp/pcx007