植物は表層微小管の配向を調節することにより、細胞形態を制御し、重力に対抗できる体を構築している。アクチン繊維は、微小管とともに植物細胞の形態を調節する細胞骨格として知られているが、「抗重力反応」における役割は全く不明である。そこで、本研究では、抗重力反応におけるアクチン繊維の役割の解明を目指した。 遠心過重力環境下で生育させたアズキならびにシロイヌナズナ芽ばえの茎表皮細胞の長軸ならびに短軸の長さを測定したところ、上部の細胞では、重力の大きさが大きくなるにつれて、長軸の長さは減少し、短軸の長さは、増加した。アクチン繊維を蛍光ファロイジンにより染色し、アクチン繊維の動態を解析したところ、重力環境にかかわらず、上部の成長中の細胞においては放射状に分布する繊維が多かったが、放射状に分布する繊維を持つ細胞の割合は下部に向かって低下した。また、下部に向かって、繊維の密度が低下し、太さが増加した。過重力環境下では、放射状に広がる繊維の角度が1 gのものとは異なっていた。また、過重力により太い繊維の数が増加した。同様の傾向は、赤色蛍光タンパク質でアクチン繊維を可視化した形質転換シロイヌナズナでも見られた。メカノレセプターの阻害剤で処理をした芽ばえでは、過重力によるアクチン繊維の動態変化は見られなかった。次に、アクチン繊維の動態と表層微小管の配向の間に何らかの関係があるのか否かを解析した。その結果、過重力により表層微小管の配向が大きく変化する部位でも、アクチン繊維の動態変化は見られたが、表層微小管の配向変化があまり見られない部位でも、アクチン繊維の動態変化が同様に見られた。アクチン繊維と表層微小管との相互作用に関しては、さらなる検証が必要である。 以上のことから、アクチン繊維は、抗重力反応に何らかの役割を担っている可能性が示された。
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