研究課題
基盤研究(C)
植物の抗重力反応への関与が予想された細胞膜成分のうち、膜ラフトの構成タンパク質に関するGFPラインを用いて、動態解析を行った。GFP由来のシグナルは、細胞膜上にドット状に認められた。このシグナルは、成長前のフック部分の表皮細胞にはほとんど存在せず、胚軸上部の成長部域では、成長が停止した中央部や基部の細胞と比べて、より多く見られた。このようなドットの分布の特徴は、芽ばえが長く成長した後でも維持されていた。さらに、過重力環境下で生育させた芽ばえ表皮細胞では、対照と比べてドットが大きく、より高密度に分布していた。このGFPラインを用いて得られた結果が膜ラフト全体の動態と一致するかを確認するため、膜ラフトを構成する脂質やタンパク質を標的とする数種類の蛍光標識方法について比較、検討した。その結果、Flotillin-1に対する抗体を用いることにより、GFPラインと同様に、細胞膜上のドット状のシグナルを安定的かつ効率的に観察できることがわかった。そして、この方法で得られた結果は、GFPライン、あるいは、膜ラフト全体をより広く染色すると考えられるフィリピンやコブラ毒素を用いて得られた知見とよく一致していた。したがって、本年度の研究で得られた結果が抗重力反応における膜ラフトの動態を反映していることが明らかになった。膜ラフトの構成成分であるステロール合成に関わるHMGのノックアウトラインhmgを用いて、抗重力反応における膜ラフトの機能を検証した。hmg変異体の成長は、1 g下で既に抑制されていた。また、過重力条件下で生育させたところ、抗重力反応における特徴的な反応である、胚軸の肥大成長や細胞壁多糖、特にセルロースの蓄積が十分に起こらないことが明らかになった。これらの結果より、抗重力反応において膜ラフトが重要な機能を果たしていることが支持された。
3: やや遅れている
本研究で対象とした細胞膜成分の内、膜ラフトの動態や機能については、満足できる結果が得られた。しかし、他の成分に関しては、解析に適したGFPラインやノックアウトラインの入手、選抜ができなかったため、十分な解析の実施に至らなかった。この問題を解決するために、SALK研究所の純系T-DNA挿入ラインの中から、本研究に適したラインを単離する実験を既に開始している。
膜ラフト以外の細胞膜成分に関わるGFPライン及びノックアウトラインを連携研究者等から入手する。SALK研究所の純系T-DNA挿入ラインの中から、本研究に適したノックアウトラインを探索、単離する。得られたGFPライン及びノックアウトラインの動態や形質を1 g下及び過重力環境下で解析し、抗重力反応における各細胞膜成分の機能を解明する。GFPラインの動態に関するデータの比較処理、並びにそれぞれのノックアウトラインの他の成分に関わる形質の精査を行い、抗重力反応における細胞膜成分の相互作用を明らかにする。各成分のノックアウトラインのマイクロアレイ解析を行い、各成分の変異により、抗重力反応における他の細胞膜成分の代謝や機能に関わる遺伝子群の発現がどう変化するか、解析し、相互作用を解明する。
本研究で対象とした細胞膜成分の内、膜ラフト以外の成分に関する適当なGFPラインやノックアウトラインの入手、選抜ができなかったため、十分な解析の実施に至らず、そのために予定していた研究費を使用しなかった。膜ラフト以外の成分に関するGFPラインやノックアウトラインの入手、単離、選抜とその解析に重点的に使用する。特に、SALK研究所の純系T-DNA挿入ラインについては、約20,000ラインを保有しており、そのスクリーニングに十分な予算を使用する。
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Plant Biology
巻: 16 (S1) ページ: 91-96
10.1111/plb.12099