研究課題/領域番号 |
25515001
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
人見 健文 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50402904)
|
研究分担者 |
陳 和夫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90197640)
池田 昭夫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90212761)
松本 理器 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378754)
澤本 伸克 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90397547)
井内 盛遠 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30532600)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 病態脳 / 睡眠 / てんかん / ミオクローヌス |
研究実績の概要 |
良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(Benign adult familial myoclonus epilepsy: BAFME)は、常染色体優性遺伝、稀発全般発作、皮質振戦(微細なミオクローヌス)、神経生理学的検査には皮質反射性ミオクローヌスを呈する。BAFMEは非進行性と考えられていたが、近年我々はBAFMEにおいて加齢に伴う皮質振戦の進行、体性感覚誘発電位の振幅増大(Hitomi et al., Mov Disord 2011)を報告し、また一部のBAFME家系では臨床症状の表現促進現象を報告した(Hitomi T et al., Epilepsia 2012)。 本研究では、大脳皮質の過剰興奮を示す病態脳(BAFME)およびコントロール群としての正常被験者を対象とし、睡眠が大脳皮質の局所の過剰興奮に与える影響の検討、睡眠が大脳皮質の過剰興奮に対して与える影響を検討する。 本年度は、研究の2年次の段階として、FDG-PET・MRI健常被験者データベース作成に関するIRB承認を得た上で、データー取得を行った。またBAFME患者における睡眠・覚醒時の脳波データー取得を行い。現在解析を開始した所である。またこれらのデータ取得に関しても、計測および解析のプロトコールについて検討を適宜行っている。 また本研究の並行してBAFMEの覚醒時の病態研究を更に進めた。BAFME12家系を対象として臨床症状の表現促進現象を検討した。全家系で表現促進現象を認め、その傾向は母系遺伝の際に顕著だった。このことはBAFMEが母系遺伝で表現促進現象を認める疾患と共通の分子生物学的異常すなわちトリプレット・リピートを有する可能性を示唆した(業績参照)。またBAFME19名では脳波の後頭部優位律動(アルファ波)の最大周波数を解析したところ、後頭部優位律動はBAFME(9.1±0.7Hz)では脳波正常対照群(10.4±1.1Hz)よりも有意に徐波化していた。これはBAFMEにおいて軽度だがびまん性脳機能障害を有することを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、大脳皮質の過剰興奮を示す良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(Benign adult familial myoclonus epilepsy: BAFME)およびコントロール群としての正常被験者を対象とし、睡眠が大脳皮質の局所の過剰興奮に与える影響、睡眠が大脳皮質の皮質間ネットワークの過剰興奮に与える影響を検討する。 本年度は、次年度としてFDG-PET・MRI健常被験者データベース作成に関するIRB承認を得た上で、データ取得を行った。またBAFME患者における、脳波などの各種測定についても適宜行い、その他の脳磁図・FDG PET・MRIなどの計測プロトコールについても適宜検討を行った。これにより最終年度の本格的なデータ解析および残りのデータ計測に必要な研究基礎およびデータをほぼ完成しつつあると考えられる。 またこれに並行して、睡眠時の研究を進める上で必要なBAFMEにおける覚醒時の病態研究を更に進めた。BAFME12家系を対象として臨床症状の表現促進現象を検討した。全家系で表現促進現象を認め、その傾向は母系遺伝の際により顕著だった。このことはBAFMEが母系遺伝で表現促進現象を認める疾患と共通の分子生物学的異常すなわちトリプレット・リピートを有する可能性を示唆した(業績参照)。またBAFME19名では脳波の後頭部優位律動(アルファ波)の最大周波数を解析したところ、後頭部優位律動はBAFME(9.1±0.7Hz)では脳波正常対照群(10.4±1.1Hz)よりも有意に徐波化していた。これはBAFMEにおいて軽度だがびまん性脳機能障害を有することを示唆している。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は残余のデータ計測および得られたデータ解析を順次進めていく。 初年度および本年度に作成および修正したプロトコールに基づき、BAFME患者および正常被験者でデータ計測を継続する。得られたデータ解析は個々の症例毎からも行う。もし記録中にてんかん発作が記録されれば、別途解析し同一患者内におけるてんかん発作時と非発作時についても比較・検討する。症例数、正常被験者が蓄積しつつある検査項目については、正常被験者との群間比較を順次行っていく。最終的には上記検討で得られた知見と患者の臨床症状(てんかん発作の頻度・ミオクローヌスの程度など)との関連についても検討を行う。 BAFMEにおけるミオクローヌスは睡眠時も含めて常時出現している。また、てんかん性放電は、覚醒時・睡眠時共に比較的頻回に認められる。よって、上記手法によりてんかん性放電の出現時および非出現時(ミオクローヌスのみ)の陽性データでの比較検討はほぼ間違いなく可能と予想する。 問題点があれば、研究代表者、分担研究者間で討議し、必要に応じて電気生理学的手法、脳機能イメージング手法に関しては、これまでの共同研究で培った協力関係にある学内、学外の各分野の専門家に助言を仰ぐ。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、大脳皮質の過剰興奮を示す良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(Benign adult familial myoclonus epilepsy: BAFME)および正常被験者を主な対象とし、睡眠が大脳皮質の過剰興奮に与える影響の検討、睡眠が大脳皮質の皮質間ネットワークの過剰興奮に与える影響を検討するものである。 本年度はIRB承認後、FDG-PET・MRI健常者被験者データベース作成に関する計測を行ったが、若年者のデータ取得はほぼ終了したが、中高年者のデータ取得が遅れたため謝金が少なめになったと考えられる。また一部解析ソフトなどの備品も一部購入が遅れたものがあったため次年度使用額が生じたと考えられる。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度は、初年度および本年度に確立した研究基盤・計測データを元に、残りに計測およびデータ解析を行う。前述の中高年者のデータ取得(謝金)を引き続き行う。各種計測の必要物品の中には消耗品(消耗品費)も含まれており、適宜補充を行う。脳波などの各種データはネットワーク型のハードデイスク(設備備品費)に保存した上で、専門解析ソフトウェアを用いて解析する。 また引き続き他施設との研究情報交換および成果発表(国内旅費)なども行う予定である。
|