研究概要 |
関節リウマチrheumatoid arthritis (RA)患者の日常生活動作において、リウマチ気質と呼ばれる一面が、炎症性サイトカインとくに増殖性転写因子c-Fos及びIL-1βの過剰によって一方で関節破壊が促進される(JCI 99:1210, 1997)と同時に、c-Fos亢進が直接細胞周期蛋白Wee1を増加させてRAに特徴的な“腫瘍様”滑膜増殖を来し(EMBO J 20:4618, 2001;Nature Biotechnol 26:817, 2008)、さらにWee1増加が“時計遺伝子を狂わせることによって関節炎を悪化させて(J Immunol 184:1560, 2010)睡眠障害を惹起し、こうした結果、睡眠障害と同時に関節炎がさらに悪化する可能性についてこれを是とし、私達は予備的研究から、リウマチ気質が独立症候でなく病態(c-Fos過剰)の結果である可能性を指摘した。私達の睡眠研究442例(actigraphy, somnography)において相当の睡眠障害を認めている。 本研究は従って、RAに対して①生物学的製剤等の治療的介入を行ってその睡眠障害への効果を調べ炎症が睡眠に及ぼす影響を検証する一方、②夜のホルモンであるメラトニン投与の疾患活動性への効果を調べて睡眠が炎症に及ぼす影響を検証することを目指している。この研究により、ヒトの疾患とくに炎症と睡眠の関係を明らかにし、睡眠の改善を治療に役立てたいと考える。そして、ヒトにおいて実際、炎症が睡眠にまた睡眠が炎症に及ぼす影響についてRAすなわち関節の炎症(関節炎)で検証することを企図している。 この目標を達成するために本研究は、臨床的に、①生物学的製剤等の治療の前後を通じて、患者の疾患活動性の変化と共に治療の睡眠障害への効果を検証して、炎症が睡眠に及ぼす影響について治療的介入の視点から解明している。また反対に、②夜のホルモンであるメラトニンの臨床的投与の睡眠および疾患活動性への効果を正常の睡眠への導入という視点から解明しつつある。
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