研究課題/領域番号 |
25515008
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
福水 道郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (30593537)
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研究分担者 |
林 雅晴 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 参事研究員 (00280777)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 重症心身障害 / メラトニン / 抗酸化物質 / 睡眠障害 / 小児神経疾患 / アクチグラフィー / 心拍変動 / 自律神経 |
研究実績の概要 |
小児神経疾患における睡眠障害の病態解明においては、第56回日本小児神経学会総会と日本睡眠学会第39回定期学術集会医師教育セミナーにおいて、重症心身障害児者における尿中6-sulfatoxymelatonin(6sMT)定量によるメラトニン代謝の評価について報告した。さらに酸化ストレスマーカーとメラトニンの日内変動に関する解析を行い、A群色素性乾皮症(XP-A)患者と年齢相当対照において、0:00, 6:00, 12:00,18:00の4ポイントで尿を採取し、酸化ストレスマーカー(DNA: 8-OHdG, 脂質:HEL)と6sMT値は年齢別の変化がXP-Aと対照では逆転していた。 小児神経疾患における睡眠障害に関する視床下部・脳幹病変の解析においては、小児神経疾患の剖検脳で今まで検討されてこなかったメラトニン受容体(MT1, MT2)表出を免疫組織化学的に検討した。LSBio社のMT1B抗体を用いて、新生児~小児対照の視床下部と海馬切片で染色を試みたが、再現性のある結果は得られなかった。 小児の睡眠障害におけるメラトニン・ラメルテオン治療の評価では、日本小児精神神経学会、日本小児心身医学会、日本小児神経学会の合同研究として、「メラトニンならびにラメルテオン小児使用例に関する全国調査」の一・二次調査を完了したため、メラトニン小児使用例に関する全国二次調査の内容を第56回日本小児神経学会総会で発表し、座長推薦演題に選ばれた。両者の小児での使用実態が明らかになり、メラトニン使用に関しては小児睡眠障害に広く使われていたものの、同意や許可が不十分な場合もあり、薬品開発することが望まれることがわかった。この内容は平成27年1月小児神経学会和文誌「脳と発達」に掲載され、この論文を踏まえて発達障害における睡眠障害に対するメラトニンの臨床治験を、ノーベルファーマ株式会社と協働して進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「メラトニンならびにラメルテオン小児使用例に関する全国調査」の一次・二次調査の結果が平成27年1月小児神経学会和文誌「脳と発達」に原著論文として掲載された。また第56回日本小児神経学会総会と日本睡眠学会第39回定期学術集会医師教育セミナーにおいては、重症心身障害児者における尿中6sMT定量によるメラトニン代謝の評価についても報告した。この評価結果に関してはさらなる検討が必要で早期論文化のめどは立っていないものの、A群色素性乾皮症患者においても検討が進んでいる。さらに平成27年度の小児神経学会で、動きのある重症心身障害児者についてはアクチグラフィーを用いて「経口摂取が可能な重症心身障害者における睡眠覚醒リズム分析とメラトニン代謝」について発表する予定であり、またアクトグラムでの解析が難しい動きの少ない重症心身障害児者についても今年度の睡眠学会で脈波計を用いて「動きの少ない重症心身障害者における心拍変動とメラトニン代謝を用いた睡眠評価の試み」を発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
重症心身障害者の抗酸化物質としてのメラトニンの機能にも着目し、尿中メラトニン値と酸化ストレスマーカー、睡眠障害以外の臨床症状との関係等についても今年度の小児神経学会で発表する予定であり、多角的な検討を進めている。また、動きの少ない重症心身障害児者については平成27年度は脈波計を一時的に借用して睡眠評価を試みたが、評価できるめどがたったため、今後は最近購入した携帯心電計を用いて睡眠時の自律神経機能とメラトニン代謝物との関係を検討する予定である。メラトニン受容体(MT1, MT2)の免疫組織化学的検討に関しては今後、別抗体を用いた試みを行うとともに、新規抗体の作製も検討する。A群色素性乾皮症(XP-A)患者と年齢相当対照においては、尿中酸化ストレスマーカー(DNA: 8-OHdG, 脂質:HEL)とメラトニン代謝物(6-sulfatoxymelatonin)に関して、現在症例数を増やして解析を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の際に予定より安価で購入ができたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
122823円とその分は来年度に十分使用できる少額であり、来年度は今年度購入した心電計の解析プログラム(ソフトウェア)を購入するために活用する予定である。
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