閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea; OSA)は、睡眠中に上気道が閉塞する疾患である。OSAは二大死因である心脳血管疾患の発現と悪化に関与し、睡眠障害の中でも最も高頻度にみられることから、その病態解明は睡眠科学領域における重要課題である。本研究はOSAの病態解明を目的とする基礎的研究であり、ヒト上気道内に圧変化を生じさせた際に、上気道反射機能にどのようは変化がみられるかを上気道拡張筋筋活動を指標に生理学的に探索してきた。しかしながら、OSA患者の上気道拡張筋(genioglossus muscle)筋活動のボール型表面電極を用いた非侵襲的かつ安定的な記録が困難であることが判明したため、この筋活動記録を中止し、上気道内圧変化に伴う上気道弾性(エラスタンス)変化を観察する実験へと変更した。被験者は、終夜ポリグラフ検査によりOSAと診断された患者(Apnea Hypopnea Index [AHI]=5/hr)ならびにコントロール(非OSA)とした。実験室内において、安静座位にてインダクタンスプレスチモグラフを装着し呼吸状態をモニタリングし、換気量がFRCレベルになった際に、術者による空気注入あるいは吸引により上気道内圧を変化させ、このときの被験者の上気道エラスタンスをオフラインで実験的に求めた。この実験の結果から、上気道エラスタンスは性別、年齢、体型、上気道形態によって大きく異なることが明らかとなり、この違いがOSA発症有無やOSA重症度(Apnea Hypopnea Index)に関与している可能性が示唆された。
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