当該研究の目的は、個人のワーク・キャリアに関する認知が、きわめて予測困難でありながら非常に影響力の強い自然災害によって、どのような過程を経て再体制化していくのかを、東日本大震災という具体的事象をめぐる比較事例的視点から明らかにすることである。理論的には、ワーク・キャリアにおける環境変化を主として扱うトランジション研究における鍵概念の批判的再検討を目的としている。経験的分析としては、歴史上稀有な自然災害である東日本大震災に主眼を置くことで、研究の独自性を追求するものである。 平成25年度においては、以下の活動を主として実施した。第1に、当該研究では、キャリア・トランジションおよびセンス・メイキングの理論的枠組みを、各フィールドの分析に適用することを企図している。そのため、各領域の文献研究を進め、前述した分析枠組みを、より精緻化することを目指した。他方で、東日本大震災という具体的事象に関連するフィールド調査を予定している研究であるため、その事象に関連する図書や資料の渉猟をもとに、それらのフィールドについての十分な知識のうえでの研究の遂行をはかった。 第2に、研究成果の中間的な内容をまとめ、国内学会で以下の報告をおこない、査読済みのショートペーパーを提出している。 上野山達哉・櫻田涼子「トランジションはつねに『結果としての変化』をともなうか?:東日本大震災被災地事業所従業員のケースをもとに」経営行動科学学会,名古屋大学,2013年10月. 上野山達哉・櫻田涼子「トランジションはつねに『結果としての変化』をともなうか?:東日本大震災被災地事業所従業員のケースをもとに」『経営行動科学学会第16回年次大会発表論文集』411-416ページ、2013年10月。
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