研究課題/領域番号 |
25516007
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
内藤 徹 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (90309732)
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研究分担者 |
小川 光 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10313967)
伊ヶ崎 大理 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (10336068)
福山 博文 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (40409537)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 南海トラフ地震 / 家賃関数 / 自然災害リスク / 出生行動 / 人口移動 |
研究実績の概要 |
本年度については,前年度の研究を基盤として自然災害リスクが居住者行動にいかなる影響を与えるについての研究成果をまとめた.具体的には,南海トラフ地震で大きな被害を受けると予想される徳島県東部について家賃関数の推定を行い,賃貸住宅価格において海岸線からに距離,避難所までの距離,標高,建築年数,建築構造がいかなる影響を与えているかについて明らかにした.また,震災のようなリスクに直面した家計の出生行動や移住行動を世代重複モデルを用いたモデルを援用することでその行動を明らかにした. 前者の家賃関数の推定によって以下のことが明らかになった.築年数や木造建築物については,将来発生する可能性のある震災リスクが反映されているが,津波の際の避難場所,より具体的には標高や緊急一時避難先からの距離については震災のリスクをとらえることができなかった.また,推定時期の直前に徳島県から公表された南海トラフ地震発生に基づく津波による予想浸水高についても予想浸水高が高い地域の方が家賃が高く,借家人は賃貸物件を選択する際には必ずしもこうした自然災害リスクを加味していないことが明らかになった. また,理論研究においては,将来の自然災害の発生リスクが高まると,将来に備えるために育児に関する支出を減らすインセンティヴが働き,少子化を加速する可能性があることを明らかにした.また将来の賃金格差の発生に伴い,一部の地域への集積が発生する,言い換えれば,人口減少がするむことも明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述したようにこれらの研究成果は,日本地域学会,Southern Regional Science Association,九州経済学会,日本GIS学会等の権威ある学術研究集会・国際会議で報告がなされた.これらの研究集会および国際会議で報告された論文の一部は査読付き学術雑誌に掲載されることで研究成果の公開が図られた.各担当者は理論分析あるいは実証分析を行い,これらの研究成果は,日本地域学会,Southern Regional Science Association,九州経済学会,日本GIS学会等の権威ある学術研究集会・国際会議で報告がなされた.これらの研究集会および国際会議で報告された論文の一部は査読付き学術雑誌に掲載されることで研究成果の公開が図られた.具体的な研究成果としては以下があげらえる.(1)Naito (2015)``Characteristics of residents and evacuation spots for Nankai Trough Earthquake: Case study of Komatsushima City" , Studies in Regional Science, forthcoming. (2)伊ヶ崎大理,(2014)「集積・出生および経済成長」,地域学研究44号(3),277-288.この他,上記の学会等で報告された論文は既にRegional Science Policy and Practiceや九州経済学会年報などの査読付き学術誌に投稿され現在査読中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は最終年度における持続可能な防災政策に関する研究を推進し,過去2年間に行ってきたような研究成果の公開をしかるべき学会あるいは国際会議において報告を行う予定である.言うまでもなく,研究成果の公開は権威ある学術雑誌への公刊であるため,こちらについても同時に投稿をすすめていく予定である. また,本研究は地域社会において公表されることに非常に重要な意義が見出されるため,カンファレンスの実施や冊子の作成など研究者以外の人間にもその研究成果が波及させる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
出版物にかかる英文校正費を支出する予定であったが,年度の内の科研費の使用期限1月末以降に校正依頼がずれ込んだため,当該年度での支出できなかった.また,共同研究者が予定していた学会での研究成果の報告が翌年度にずれ込んだため,こちらも当該年度での支出にならなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
英文校正については,4月に支払いが完了する予定である.また,研究成果の報告も秋以降の学会で報告する予定である.
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