本研究の目的は、情報通信資本が様々な自然災害による被害を軽減させる効果があるか否かを実証的に分析することである。1年目、2年目の研究では、「関連文献のサーベイ」、「関連データの整理」、「実証分析」、「論文の作成」などを行ってきた。研究最終年度にあたる本年度は、私が共同研究者であるMark Skidmore氏の所属するミシガン州立大学に3週間程度滞在し以下の研究活動を行った。1)研究発表:作成した論文をミシガン州立大学のセミナーで発表し、多くの有益なコメントが得られた。2)論文の改訂、完成:セミナーで得られたコメント等にもとづき、論文の改訂作業を行い、完成させた。3)論文の投稿:完成した論文 “Information/communication technology and natural disaster vulnerability”を海外査読誌であるEconomics Lettersに投稿し、受理された。 上記論文では、1980年から2013年における120ヶ国のパネルデータを用いた固定効果パネル推計による分析を行った。具体的には、情報通信資本として「携帯電話の普及率」および「インターネットの普及率」を用いて、それらの普及率が「自然災害による死者数/自然災害の影響を受けた人々」にどのような影響があるかを検証した。得られた結果は、情報通信資本は、自然災害による死者数を軽減させる効果があり、取り分け「携帯電話の普及率」がその効果が強いことが示すものであった。更に人々がより学校教育を多く受けている場合ほど、その効果が大きいことが示された。 これらの結果は、社会・経済における新たな情報通信資本の役割を示唆するものであり、自然災害による被害を軽減させる重要な政策の指針となるものである。
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