研究課題/領域番号 |
25516015
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
井上 和男 帝京大学, 医学部, 教授 (70275709)
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研究分担者 |
鹿嶋 小緒里 広島大学, その他の研究科, 助教 (30581699)
松本 正俊 広島大学, その他の研究科, その他 (40348016)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 医師分布 / 津波 / 原発事故 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、東日本大震災の2つの主な被害である津波と福島第一原発事故の各々について医師分布に与える影響を調査した。平成26年度の予備解析(二次医療圏)で、津波被害による医師分布への影響は軽度である一方、原発周辺の医師の減少は二次医療圏での分析でも明瞭に見られており、本年度はそれを更に細分化して検証した。 具体的には、岩手、宮城、福島の3県を対象として市町村単位、および(病院医師について)病院所在地ごとについて津波および福島第一原発からの距離で層別化して震災前後(2010年、2012年)での医師分布の変化を観察した。 その結果、1.3県全体での医師数の変化は全、病院および診療所医師で各々0.2、0.7および-0.7%で、診療所で微減していたが、それ以外では減ってはいなかった。ただし全国平均と比較するといずれも低かった。2.津波に関しては、浸水地域より近隣(5km以下)の病院で医師数の軽度の減少を認めたものの、医師数対人口比で見た場合には減少はどの層別距離においてもみられなかった。3.病院所在地別の福島第一原発からの距離で、(20km圏内では当然ながら居住制限区域のため著しい医師の減少がみられたが)それ以外の21-50kmおよび51-75kmで病院医師が全体として3.2%および4.3%減少しており、各々の病院別の調査でも同じ傾向であった。なお、76km以上の地域では減少はみられなかった。 以上より、東日本大震災の2つの主被害である津波と福島原発事故では、前者は医師数の減少を起こさなかったのに対して、後者では原発に近いほど医師が減少していることが示された。結果として、平成26年度の予備的解析で形成された研究仮説を裏付けるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記結果は既に、英文原著論文として投稿済みである(BMC Health Research、原著)。なお、学会発表については平成28年度中に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
科研費申請時の研究疑問の一つである、医師属性による地理的分布、特に被災地域からの流出についての検討が残っている(このため研究期間の1年延長を行った)。平成28年度についてはこの研究疑問に対して分析を行う予定で、実際に既に成果を論文にまとめる過程が進行中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究仮説であった、医師の属性別の被災地域(原発事故)からの移動、つまり流出状況について次年度に分析予定である。既に下記の論文題として作成することとなっている。 Which type of physicians are more susceptible to outflow from the nuclear accident following the Great East Japan Earthquake?(仮題)
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次年度使用額の使用計画 |
研究ミーティングおよび学会発表にかかわる旅費などと、分析用ソフトウェア(SPSSなど)の更新に使う予定である。
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