東日本大震災は自然大災害として、被災した地域社会の基盤を揺るがした。本研究では、被災地域で医療の中核を担う医師の分布における震災の影響を調査した。その結果、(1)3県(岩手、宮城、福島)の調査で、医師分布への津波の影響はみられなかった。一方、原発事故では周辺地域ではあきらかな医師減少が、人口を考慮してもみられた。(2)2県(宮城、福島)の調査で原発からの距離が近いほど医師は流出しており、原発距離100km以上の市町村に比して20-50 kmでは3.9倍、50-100 kmでは2.6倍より原発から遠隔の市町村へ流出していた。また、低年齢および経験年数の少ない医師で流出の程度が大きかった。
|