研究課題/領域番号 |
25516016
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
辻 智子 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20609375)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 青年 / 青年団 / 若者 / 地域 / 東日本大震災 / 原発 / 地域間移動 / 学習運動 |
研究概要 |
本研究3年目(本助成金(基盤研究C)による研究活動としては1年目)として引き続きヒアリングや生活記録の取り組みを行った。主な調査活動は、①地域青年団活動者による震災問題に関する学習会・座談会への参加や同行、②個別のヒアリング、③記録作成とその共有、を行った。本研究の特徴は継続的縦断的な調査にあるため、現時点で結論をまとめる段階には至っていないが、昨年度までとの対比という視点からすると以下の点に興味深い示唆を得た。 一つは、震災地域支援・復興の過程において、UターンやIターンで若者が還流・流入し、地元の若者たちとの多様な関係性が生まれている点にかかわってである。そもそも当該地域(具体的には岩手県陸前高田市)において若者たちはどのように町を出たり、町に残ったり、町に帰ってきたりしていたのか、それが震災の場面においてどのような変化を見せるようになったのか、そしてその変化は、各々の青年たちにとって今どのような意味を持ち始めているのか、そこで生まれている多様な活動の実態と人びとの相互関係の展開とともにさらに深く見てゆきたい。 二つは、原子力発電所(原発)の問題に関する学習活動の萌芽が見え始めた点にかかわる。とりわけ、福島県を含む原発立地地域に暮らす若者たちから、この問題に向き合おうという声が聴こえ始めたことに注目している。原発立地地域は、その地域の存続のために原発を選択してきたことから、雇用を含む地元経済の活性化という「大義」の下で原発について考えること、とりわけそれへの懐疑や批判的な議論を封じられてきた。3.11後も変わらぬこの状況の中で、原発によってその生活基盤を支えられている若者たちも含めて、これを考えようという動きが地域で生まれつつある。こうした青年学習運動の展開を注視しつつ、それが個々の若者の職業や暮らしとどのようにつながっていくのか引き続き見ていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本青年団協議会との共同・連携により現在進行形で地域の青年活動や若者の動きをとらえ、それを記録化していく作業は着実に行うことが出来ている。縦断的・継続的な関係性も一定程度、築けていることから、全体的には概ね順調といえる。 他方、歴史史料の探索については、一部、やや困難さも見え、課題が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
一つは、引き続き継続的に現在進行形で地域青年たちの活動とそこでの若者たちの声を丁寧に拾い上げ記録化してゆくことである。岩手県陸前高田市、同大槌町については、さらに若者の巾を広げ、その多様性を視野に入れつつ、ヒアリングなども行ってゆく。 二つは、地域を越えた青年集団相互の関係とその共同的な取り組みの展開についての考察である。震災後3年が経ち、状況は震災直後とはかわってきている。被災地支援というのではなく、被災地に学ぶこととそこから各々やその地元に対し新たな視点を持つことへと展開してきている。これらの動きを観察してゆく。 三つは、地域に関する基礎的資料の収集をさらにすすめる。とりわけ岩手県大槌町については、地元住民へのより幅広い聴き取り等も含め地域史料をさらに収集できるようとりくむ。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒアリングおよび資料収集のいずれも現地調査が基本となるため、岩手県陸前高田市・大槌町、その他地域への調査旅費を必要としている。同時に、調査協力者への謝金、またヒアリング等の記録化も平行して行うため、印刷製本費用を必要とする。 ヒアリングや現地調査に必要な旅費として80万円、ヒアリング協力者への謝金(若干)、記録作成費用(20万円)、他は消耗品購入(紙・文房具など)を使用する見込みである。
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