研究課題/領域番号 |
25516023
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研究機関 | 公益財団法人政治経済研究所 |
研究代表者 |
岩見 良太郎 公益財団法人政治経済研究所, その他部局等, 研究員 (50193769)
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研究分担者 |
小宮 昌平 公益財団法人政治経済研究所, その他部局等, 研究員 (00124280)
北村 浩 公益財団法人政治経済研究所, その他部局等, 研究員 (10414070)
山本 唯人 公益財団法人政治経済研究所, その他部局等, 研究員 (50414074)
合田 寛 公益財団法人政治経済研究所, その他部局等, 研究員 (90623182)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 液状化 / 埋め立て / 開発 |
研究実績の概要 |
浦安市の「液状化対策事業計画案」作成調査に向けての合意形成が大幅に遅れたことから調査スケジュールを変更して26年度調査に臨んだが、やはり、6月末合意形成完了の予定がさらに遅れ、すべて関係地域で合意形成を見たのは12月という状況であった。そこで、パイロット調査の日程を12月以降にずらせ、それまでの期間を予備調査に充て、関係機関、議員、住民からの聞き取り調査を実施した。 8月に、浦安市、浦安市市議から聞き取りをおこなうとともに、液状化対策事業について活動している7名の住民と懇談を持ち、各自治会の合意形成の進行状況、液状化対策事業の工法をめぐる評価等についてヒアリングをおこなった。9月には、浦安市液状化対策事業のコーディネートにあたっている民間コンサルタントから、この間、コンサルが果たした具体的役割を中心に、ヒアリングをおこなった。さらに、9月、10月には、浦安市と異なり、地下水低下工法を追求した我孫子市、千葉市から、同工法採用にいたった背景、それに対する住民の反応などについて聞き取りをおこなった。12月から27年2月にかけ、5地区7名から、パイロット調査「液状化によるくらしの被害と対応についての聞き取り調査」をおこなった。主な聞き取り内容は、住宅、周辺地域の被害状況と日常生活への影響、被災直後の自治会の役割、住宅の修復・建て替え状況、浦安市の液状化対策事業の進め方、工法の評価ならびに事業への参加意向等である。質問票はA4で5ページ、ヒアリング時間は一人あたり、1時間半から2時間という詳細なものであった。 以上の調査結果については、本研究所のリサーチペーパーNo.23にまとめた(2015年6月2発行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、パイロット調査「液状化によるくらしの被害と対応についての聞き取り調査」ならびに、それに向けての予備調査をおこなったが、液状化対策事業への姿勢が、住民の被害状況、人生将来設計、不動産の利用・処分意向等によって異なり、したがってこうした条件が似通った地区は合意形成をしやすいということを、具体的に把握することができた。さらにコミュニティへの帰属意識・価値評価の地域的差異が合意形成の成否に大きく関わっていることが判明したことも大きな成果であった。 パイロット調査のサンプル数は予定より若干少なくなったが、液状化被害-生活困難-液状化対策事業への参加意向の関係性が、個人属性、地域特性をふまえて立体的に、リアルにつかむことができ、したがって、27年度実施する本調査のイメージを固めることができたことで、その目的は十分達し得たと判断している。 さらに、調査結果から得られた知見と理論的課題は、研究チーム内で議論し、問題意識の共有と掘り下げをおこない、リサーチペーパーにまとめた。内容を目次構成で示せば、以下のとおりである。 第1章 岩見良太郎「公共場と液状化対策技術」/第2章 合田寛「液状化対策事業の現状と課題―千葉市と布佐市の事例に見る」/第3章 山本唯人「千葉県浦安市における市街地液状化対策とコミュニティ―第1期埋立て地区を中心に」/第4章 北村浩「浦安・液状化対策事業における「合意」をめぐる政治」
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今後の研究の推進方策 |
パイロット調査等、これまでの調査・作業を通じて、防災まちづくりの政策提言につながるキーワードとして浮かび上がってきたのは、公共性、生活技術、熟議民主主義、コミュニティの可能性である。本調査を開始するにあたって、そこから有効な政策提言を引き出せるよう、これらのキーワードをベースに、分析枠組みを再構築、明確な理論構成を整えて、調査票をブラッシュアップし、本調査に臨みたい。そのため、7月初めに研究合宿をおこない、26年度策定したリサーチペーパーをベースに研究チームで、集中的議論を行う予定である。 最終ヒアリング調査は、10月~11月に実施予定である。調査対象は、比較分析によって有意な知見を引き出されるよう、「液状化対策事業計画案」作成調査における先行5地区、遅れた15地区、合意に失敗した地区から、いくつかの代表地区を抽出、各地区5名程度を考えている。さらに、震災直後から、国の液状化対策事業制度の活用による、自主的液状化対策まちづくり動き出した美浜地区自治会の活動、低層集合住宅「パークシティタウンハウス弁天」における、自主的高層化建て替えについても別途ヒアリングをおこなう。 なお、現在、液状化対策事業計画案作成の段階であり、実際に事業へ参加するか否かの合意形成はその後に続く。つまり、現在、行政、住民、自治会は、きわめて緊張した、微妙な状況下にあり、調査を成功させるためには、事前に調査の趣旨を正確に伝え、協力をお願いすることがきわめて重要である。事前準備として、この準備作業を丁寧におこないたい。
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