研究課題/領域番号 |
25517002
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
岩崎 由美子 福島大学, 行政政策学類, 教授 (80302313)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 福島第一原発事故 / 農村女性起業 / 復興支援 / 六次産業化 / 社会的企業 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東日本大震災および東京電力福島第一原発事故で被害を受けた福島県、宮城県、岩手県の農村女性起業事例を対象として、被災の状況と復旧・復興に向けた課題・問題点を現地調査により明らかにし、3.11後の東北における農村女性起業再生の方向性と支援機関の役割について検討することである。 二年目となる本年は、前年度に現地実態調査候補としてピックアップした女性起業事例の中から、主に福島県内の事例を中心に聞き取り調査を集中的に行った。訪問箇所は12カ所で、具体的な内訳は、福島市の事例3件、須賀川市の事例1件、大熊町の事例1件(会津若松市に避難)、浪江町の事例1件(福島市に避難)、飯舘村の事例3件(福島市および喜多方市に避難)、二本松市の事例1件、喜多方市の事例1件、西会津町の事例1件である。また、参考事例として、静岡県浜松市で社会的企業に取り組む農村女性グループの聞き取り調査も行った。 聞き取り調査では、震災、原発事故を経て、農村女性起業の担い手たちはどう動き、何を考えているのかを把握するために、1.被災前の生活・生業(自家の農業経営、農産加工・直売等起業活動の内容)、2.被災によるその変化の実態、3.(避難者に対して)避難生活の実態、4.原発被災があぶり出した問題、5.これからどう生きるか、という5つの観点からインタビューを行った。その結果、避難指示区域外の中通りや会津地方でも、震災前後で顧客との関係に変化が生じたが、他方で震災後新たに形成された被災者および支援者とのネットワークが女性起業活動に大きな役割を果たしていることが明らかになった。また、避難指示区域においては、帰村後の生活再建を展望するうえで地域のニーズと個人の技能・技術を組み合わせるコミュニティ・ビジネスが切実に求められていることから、こうした取り組みへの支援策を多角的に構築していくことの重要性を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主たる課題であった福島県内の現地実態調査をおおむね当初の予定通りに実施することができ、また、それらの成果をまとめた書籍を一年前倒しで出版することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は本研究の最終年となることから、研究目的に即して、調査結果の整理、補完調査、ならびに総括を行う。平成26年度は、原発事故被災者への聞き取り調査を精力的に行ったが、他方で、主に漁村部の津波被災者への聞き取り調査が課題として残されているため、今後は宮城県・岩手県の漁村地域における女性起業事例の現地実態調査を実施したうえで、研究の総括を行いたいと考えている。本調査研究結果は報告書としてとりまとめ、所属する学会で発表するほか、報告書の内容を読みやすくリライトした書籍の出版を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金が5,320円と端数であるため、無理に使用するよりも次年度に合算して調査に必要な旅費に充てたいと考えたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究活動で行う現地調査の出張旅費に充てる予定である。
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