研究実績の概要 |
1、森林生態系における土壌‐植物(ササ)‐動物(シカ)系の構成要素間での放射性Csの定量 2014年2、3月に採取したシカの筋肉と各臓器類の全Cs濃度を測定した。また、2014年11月にササとススキの葉、並びに土壌(A層0-5㎝、A層5-10㎝)を採取し、Cs濃度を測定した。2015年2、3月に調査地で69頭のシカを捕獲し、試料を採取した。 2、シカおけるミトコンドリアDNAにおける遺伝的変異の解析 遺伝子変異の蓄積を評価するために、mtDNAのD-loop領域を解析し、各ハプロタイプの経年的変化について検討した。2011~14年に捕獲した88頭の筋肉からDNAを抽出し、PCRによりmtDNA D-loop領域約1100 bpを増幅し、これらの部分の塩基配列をシークエンスにより決定し、比較解析した。日光と足尾で捕獲したシカのハプロタイプ分布:A,B,C,D,Eとヘテロプラスミー(H)の6種類のハプロタイプに分類した。原発事故前の2011年足尾ではハプロタイプCとHの2種類が、事故後の2013年足尾ではハプロタイプB,C,D,Hの4種類が確認された。事故前の2011年日光ではハプロタイプA,C,E,Hの4種類が、事故後の2014年日光ではハプロタイプA,C,D,E,Hの5種類が確認された。2)ヘテロプラスミーの分類:1)よりヘテロプラスミー個体が複数発見されたことから、さらに4つに分類した。2004年からの過去のデータも加えて比較すると、新たに発見されたハプロタイプはBとDの2種類であることが示された。足尾と日光間の地域集団間に有意差は認められず、年度間で比較すると、事故前と事故後では、P値は0.05963±0.00695を示し(AMOVA)、危険値0.05では有意差は認められなかったが、ハプロタイプ多様度は事故前の2011年より2013、2014年で高い数値を示した。
|