研究課題/領域番号 |
25517005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保 成隆 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40134506)
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研究分担者 |
溝口 勝 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00181917)
飯田 俊彰 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30193139)
西村 拓 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40237730)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 飯館村 / 空間放射線量 / 放射性セシウム / 水田湛水 / 代掻き / 遮蔽効果 / 湛水深 / 用水供給自動遮断装置 |
研究概要 |
本研究は、水田湛水によって土壌表面に付着しているセシウムから放出されるγ線の線量率を、水の遮蔽効果で低減させ、水田周辺の環境の改善の可能性を探るものである。水田湛水深と放射線量低減効果を現地観測を通じて定量化するため、福島県飯舘村佐須地区と小宮地区の2地区を観測地区とした。佐須地区では6枚の水田を対象に水位計6機と放射線量計5機を、小宮地区では2枚の水田を対象に水位計2機と放射線計2機を設置した。観測期間は平成25年8月3日~11月30日までの約4ケ月間である。小宮地区では、一部、中断はあったものの、全期間を通じて観測を行うことができ、湛水と放射線量低減量の定量的な関係を得ることができた。また、8月~9月と10月~11月との間に、放射線量の不連続的な低下が見られた。原因は、2つの期間の境界で台風による強風と豪雨があり、地表面の落葉や粘土に付着していたセシウムが相当量流出したためと考えられる。このことは、逆に言えば、セシウムが渓流や河川を通じて、下流のダム貯水池や海に流出することを意味する。一方、佐須地区では代掻きなしで水田湛水実験を行うため、畦畔からの浸透が大きく、連続して水田に用水を供給しないと十分な湛水深を得ることが困難であった。用水は渓流から取水するが、その渓流は豪雨時に濁ってセシウムを多量に含む。そのため、豪雨時には渓流からの取水を停止するように、渓流の水位に反応して自動的に用水供給を遮断する装置の開発が必要となった。この装置を完成させるまでは、6枚の水田への用水供給は停止せざるを得ず、湛水は台風の豪雨によるものと、装置完成後の1ケ月弱の期間のみとなり、十分なデータが得られなかった。佐須では、広い水田面積を対象に実用的効果の定量化を試みたものの、得られた結果は限定的であった。12月以降は水田や山林は雪で覆われ、渓流からの取水も困難となるので実験は中断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
佐須地区での湛水実験において、対象水田の面積が大きく、代掻き湛水実験を行うことが困難になり、単なる湛水実験とせざるを得なかった。代掻きを行わない場合、畦畔浸透による水漏れが激しく用水の連続供給が必要であるが、佐須地区は避難区域に含まれているため、土曜日と日曜日以外は無人となる。このため、留守中の豪雨の可能を考えれば、用水を連続して渓流から取水することは濁水を取水してしまう危険性があり、同意が得られなかった。このため、急遽、豪雨時に用水供給を自動的に遮断する装置を開発することとなったが、開発に長時間を要しし、湛水効果を検討する十分な時間を確保することができなかった。 但し、小宮地区においては、約4ケ月間における実験で、湛水深を変化に対応する放射線量低減効果を定量的に計ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画は、佐須地区での現地観測と、放射線量低減効果を計算できる数値モデルを試作することである。 既に、用水供給自動遮断装置を完成させたので、佐須地区で用水を連続供給して水田湛水深を高く保つことができる。これによって得られたデータは、実用可能な湛水深と放射線量の低減量の関係を得る際に必要で、また、開発を目指す数値モデルのパラメータの同定における参照データにもなる。 飯館村の北部は避難指示解除準備地区になっていて、近い将来に住民の帰還が予測される。このため、水田湛水による、地区の空間放射線量低減に向けた具体的な指針を提案することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までの達成度のところで述べた様に、佐須の広い水田域での実験において、豪雨時の自動用水供給遮断装置を、急遽、設置しなければならなくなり、それの試作や完成に時間を要し、全体的な計画実行が滞った。このため、当初、計画していた活動も遅れ、研究費を予定通りに執行することができず、次年度繰越が生じることとなった。 当初計画の遅れを取り戻すべく、昨年に予定していた活動を今年度の前期に実施する。また、今年度の計画は、昨年度の分も合わせて、実施期間を短縮して集中的に行う。
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