研究課題/領域番号 |
25517005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保 成隆 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40134506)
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研究分担者 |
溝口 勝 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00181917)
飯田 俊彰 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30193139)
西村 拓 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40237730)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 飯館村 / 空間放射線量 / 放射性セシウム / 水田湛水 / 代掻き / 遮蔽効果 / 湛水深 / 用水供給自動遮断装置 |
研究実績の概要 |
水田湛水の圃場実験に関しては、昨年度の圃場実験で得られたデータの解析を進めた。その結果、実測結果と数値解析結果の間に、計算結果の方が過少となる傾向が見られた。これは、数値解析において、コンプトン散乱を考慮していないためで、当初から予測されたことではあるが、一連の解析によって、乖離量を定量化することができた。 次に、水田湛水を実用化する上で、解決しなければならない問題がでてきた。湛水用水の水質に関するものである。同時に行われている研究により、豪雨時には、用水源となる渓流水のCs含有量が増えることが判ってきた。このため、Cs含有量の多い時期には取水を停止する装置、即ち、河川水の濁度と水位には相関があるため、河川水位の上昇に応じて用水の供給を自動的に遮断する装置の作成を試みた。しかし、十分な成果を上げることができなかった。その理由としては、所期の目的を達成するには、相応の装置が必要で、その様な装置は予算の制約上、難しかったことによる。 また、水源地である林地における土壌の炭素含量やCN比と土中のCs含量との相関を調べた。地表の放射性物質に汚染された有機物が分解する過程で、有機コロイドと結合したCsを生じ、これが土中を移動していることを示唆する結果を得た。 水田代掻きにより生じた泥水を、水田深部の土に収着させ、水田土壌中のCs含量そのものを軽減する現地実証実験を実施した。実験水田ではイネの栽培試験を行い、玄米のCs吸収量を測定し、基準値以下であることの確認を行った。
最後に、以上の一連の研究の成果を取りまとめ、学会や研究報告会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水田湛水による放射線量の低減効果に関しては、現地実験と数値計算による検討から、実用化した場合の効果を定量的に見積もることが可能となった。その意味では、研究目的の達成は計画以上に進展していると言える。一方、水田湛水に必要な用水の水質に関しては、研究当初は想定していない課題であるが、渓流河川でのCs流出に関しては、多少、研究が遅れ気味である。 以上の様な状況を総合的に判断すると、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、既に避難指示が解除された地区や、近い将来に解除される地区において、水田湛水を実行できるか状況にあるかを調査する必要がある。即ち、対象地区における水利施設の破損状況、修復の可能性、施設の維持管理などに関する調査である。 また、湛水に必要な用水の水源地に関する調査は、現在、データが蓄積されつつあるので、データの信頼度を高めるために、調査を継続する予定である。 一方、水田土壌中のCsそのものを深部に移動させ、土壌による遮蔽効果を高める現地実験に関しては、既に、定性的効果は確認されているものの、定量化は十分とは言えない状況であるため、その定量化を目指して、現地実験を継続する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は15万円強であり、物品費と旅費が予定額より多少、少なく、旅費が多少多くなったが、概ね、予定通りに使用できたと考える。ただし、25年度の使用量が予定より54万円ほど少なかったので、26年度単独でみれば39万円ほど多く使用したことになる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、旅費の比重を増やし、飯館のみならず避難解除が近いと思われる周辺地域の状況の調査を行う予定である。
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