研究課題/領域番号 |
25518002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
日原 勝也 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部, 特任教授 (70526673)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 交通政策 / 契約理論 / 交通経済 / 確率的動的最適化 |
研究概要 |
航空会社、空港等の間の関係は、対立関係と協調関係が共存する複雑で多面的な構造であり、交通経済学、契約理論等の観点から興味深い。個々の主体間で収入等の変動リスクの緻密な管理がより重要になっており、リスク分配メカニズムの契約例(搭乗率保証契約)も複数現れている。リスク分配契約につき、客観的な分析枠組を構築し、当事者、社会全体への影響を考慮することは、交通経済、交通政策上も非常に重要である。 最近、欧米において、民営化空港の分割等が検討・実施され、LCCも過去20年程度の間に大きく躍進する中で、 学会においても、こうした航空会社と空港の間におけるリスク分配の状況を交通ミクロ経済の観点から分析する事例が出現してきている(Zhang et al. (2010)等)。 本研究者は、こうした状況を受け、従前、1空港と1航空会社間等の単純な関係について、リスク分配契約における支払の構造、リスクの分配状況等を客観的に把握し、当事者間のリスク分担の状況と契約を更改の過程を整理。ネットワーク維持の効果等、当該契約の政策上の意義も確認した。今年度においては、これらの成果に基づき、さらに進んで、空港とコンセッションと航空会社へのモデルへの拡張を模索し、国際学会にて中間的成果の発表を行い、今後の進捗に有意義な意見交換を行った。 また、1空港と1航空会社間の単純なケースにおける情報の非対称性(両者とも相手の行動が見えない、ダブル・モラルハザードの構造)の下で、線形のリスク分配契約が最適な契約となり得ること、また、そのために必要な条件を確率解析等の手法により具体的に明らかにした。また、平成25年度は、情報の非対称性の下での確率的動的最適化モデルを完成し、査読論文の掲載を確定するに至った。これにより、ダブル・モラルハザードの構造における確率的動的最適化の手法を用いた研究に関しては、一定の成果を得られたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
このように交通政策においても重要なリスク分配契約について、契約理論の分野等において複数当事者間による交渉の理論的な研究が進んでおり(Lu and Feng (2012)等)、航空分野における応用が現実に考慮できる状況にある。このような先駆的な研究を基に、航空分野における実体を踏まえ、当面、単純なケースから2~3の航空会社対1空港の関係について、価格、路線ネットワークへの影響等を対象に、どの程度の一般的な結論が得られるか分析することを目標としている。 本研究者においては、前述のように、こうした状況・目標を受け、従前、1空港と1航空会社間等の単純な関係について、リスク分配契約におけるペイオフの構造、リスクの分配状況等を客観的に把握。ネットワーク維持の効果等、当該契約が持つ政策上の意義も確認した。今年度においては、これらの成果に基づき、さらに進んで、空港とコンセッションと航空会社へのモデルへの拡張を模索し、国際学会にて中間的成果の発表を行い、今後の進捗に有意義な意見交換を行った。 また、1空港と1航空会社間の単純なケースにおける情報の非対称性(両者とも相手の行動が見えない、ダブル・モラルハザードの構造)の下で、線形のリスク分配契約が最適な契約となり得ること、そのために必要な条件を確率解析等の手法により具体的に明らかにした。また、平成25年度は、情報の非対称性の下での確率的動的最適化モデルを完成し、査読論文の掲載を確定するに至った。これにより、ダブル・モラルハザードの構造における確率的動的最適化の手法を用いた研究に関しては、一定の成果を得られたと考える。 これらの理論的な研究の進捗に並行し、国土交通省の航空政策担当者との意見交換も適宜実施しており、基礎的な事実関係、理論的な進捗状況とその概要等について、交通政策審議会への資料等の準備において、一定の貢献を行ってきている。
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今後の研究の推進方策 |
こうした状況、得られた知見をもとに、従前の計画を引き続き、進めてゆくこととする。具体的には、25年度に中間的に得られた理論モデルをもとに、さらに、Lu and Feng (2012)等を参考に多数当事者間への簡単な拡張の検討を具体的に進め、市場支配力にも注目しつつ、プロトタイプ的モデルを試作することを目標とする。空港経営改革等の過程で政策的に参考となりうる実証的な研究の可能性についても検討し、政策担当者との間でデータの有無・利用可能性等について対話を行う。また、空港の資金管理等に関する制度の国際比較についても、内外の文献調査、学会における情報交換等を行う。 得られた知見については、学会等にて公表することに加え、随時、政策担当者への説明、意見交換等を複数のレベルにて実施し、理論的な検討と、政策サイドの制度設計、具体的施策等の検討が相互に継続的にフィードバック可能とし、問題意識等の更新を図りつつ実施するものとする。 理論モデルについて、25年度に得られたプロトタイプモデルについて、多期間への拡張、ネットワークへの影響の把握等も含め、制約条件の緩和等により一般化を試行するとともに、困難な点も整理する。実証研究が可能となった場合には、計量モデルの検討と予備的な分析を試行する。 国際比較分析については、25年度に得られた文献上の情報等を基に、独、加、中等の海外の研究協力者等に確認調査を実施し、現地への実地調査も行って、制度面の調査も精緻化を図る。 前年度同様、得られた知見については、学会等にて公表することに加え、随時、政策担当者への説明、意見交換等を複数のレベルにて実施し、理論的な検討と、政策サイドの制度設計、具体的施策等の検討が相互に継続的にフィードバック可能とし、問題意識等の更新を図りつつ実施するものとする。
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