本研究は、オンライン上でDP(討議型世論調査) を実施し、実空間で培われてきたミニ・パブリックス活用の技術をオンライン討議へ移転するとともに、実空間上のDPと同程度の質の討議が低コストで行えるか評価することを目的とする。 研究は、平成25年度から平成27年度の3か年にわたって行った。初年度は、Web討議実験の準備を行い、平成26年度には実験の実施、最終年度は、実験結果からえられたデータの分析を行った。実験の概要は、以下の通りである。①討議テーマは、高レベル放射性廃物処分方法について取り上げた。②討議参加者は、インターネット調査会社登録のモニターから、男女比、年齢、居住地、及びWeb会議システム利用可能性という条件でスクリーニングをかけ、最終的には101人の有効参加者を得た。③実験は、平成27年1月から応募を開始し、3月1日にWeb討議実験を実施した。その間、被験者には、応募時(T1)、討議直前(T2)、討議直後(T3)の計3回にわたって同一の質問紙調査を実施、コントロール群として、非参加者1000名に対する質問紙調査を実施した。④討議実験は、101名を1グループ6名から8名からなるグループ計14グループに分け、グループごとの自由討議を70分間行い、討議最後に専門家に対する質問を作成、続く全体会で立場の異なる専門家との質疑を行うことを、計2回繰り返した。尚、討議用資料の編集及び、専門家の選出、DP全体のコーディネーションは、日本学術会議社会学委員会討議型世論調査分科会の監修のもとに行った。 実験の結果、以下のことが確認できた。①Web上においても、実空間上のDPとほぼ同様に、代表性のある参加者が確保できた。②討議参加による学習効果も、ほぼ実空間と同様に起きることが確認できた。③コストは、実空間上のDPにくらべおよそ3分の1から5分の1程度で実現できるめどがたった。
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