研究課題/領域番号 |
25518008
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
八木 信一 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10334145)
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研究分担者 |
石井 秀樹 福島大学, 学内共同利用施設等, 特任准教授 (70613230)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境ガバナンスの動態 / 橋渡し組織(境界組織) / 地下水保全 / 再生可能エネルギー / 公民館 / 環境言説 / 社会的価値 / 学習 |
研究実績の概要 |
本研究計画の中間年度として、環境ガバナンスの動態とそのなかにおいて橋渡し組織(境界組織)が果たしている機能に着目し、大都市で展開されている見沼田圃保全政策の比較参照として位置付けている、地方(都市)における諸事例を中心に研究を行った。
具体的には次の3つの成果を得ることができた。第1に、熊本地域(熊本市を中心とした11市町村によって構成)における地下水保全のガバナンスの動態について、文献調査と行政(熊本市)、NPO(環境ネットワークくまもと)、および企業(ソニーセミコンダクタ)へのヒアリング調査を通して具体的に明らかにした。そこでは、ガバナンスの動態の場面ごとに橋渡し組織としてのNPOと行政がそれぞれ独自の機能を発揮していることが分かった。また、ガバナンスの動態において行財政が果たす役割の変化についても明確にすることができた。第2に、橋渡し組織の機能について、召集機能・解釈機能・協働機能・媒介機能の4つに整理したうえで、その実際についてくまもと地下水財団を事例に取り上げて分析を行った。第3に、同じく橋渡し組織の機能分析を、長野県飯田市における再生可能エネルギーの地域ガバナンスと公民館(とくに地区公民館)の関係にも応用させた。
他方で、現時点で研究実績の途上にあるものは次の通りである。まず、環境言説に関する理論構築については文献調査の成果を踏まえて、とくに再生可能エネルギーの社会的価値や学習との関係から、これらの言説が果たしている役割について明確にする作業を進めている。次に、見沼田圃保全政策との比較参照事例として追加的に取り上げている横浜市の緑地保全政策については関係計画等の文献調査をほぼ終了した段階にあり、ヒアリング調査を進めることにより今後の研究に反映させていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重層的環境ガバナンスの動態とそのなかでの公的ガバナンスの変容について、橋渡し組織の機能を通した事例分析を着実に積み上げることができ、この点では当初計画での想定以上であった。他方で、環境言説に関する分析枠組みの構築やこれを踏まえた見沼田圃保全政策(とくにセントラルパーク構想)への応用については研究の進展は見られるものの、実績をあげる途中にある。以上の理由から、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の最終年度であることから、まず前半(9月まで)に見沼田圃保全政策を事例として、重層的環境ガバナンスの動態における環境言説(セントラルパーク構想)が与えた影響について研究を進める。そのうえで後半(10月以降)は、橋渡し組織の機能という観点から見沼田圃保全政策を評価し、その後報告書として最終的な研究成果を取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な事例調査地である埼玉県以外の調査(八木の場合は熊本市等、石井の場合は栃木県塩谷町)を進めたことから旅費の支出が当初見込みよりも少なくなった一方で、これらの調査の実施によって当初予定していたさいたま市や市民団体へのヒアリング調査を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していたさいたま市、市民団体、および研究計画途中より追加した横浜市へのヒアリング調査に関連した旅費の支出、および追加的な物品購入(主に洋書・和書)による使用を計画している。
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