1990年代末から2000年代にかけて全国的に進められた市町村合併(「平成の大合併」)は、基礎自治体の行政組織の整理統廃合や財政状況の改善にとどまらず、高齢化や産業構造の転換など、地域・自治体をとりまく新しい自治体政策を展開する基盤を創出できたのか。本研究は、「大合併」の中で合併した自治体の中でも、とくに規模(関係市町村数、面積)の大きな合併をした自治体を対象とした調査を通じて、合併から一定期間を経た時点において、自治体の政策にどのような変化がみられるのか、またそれがどのように評価されるのかを、社会学的な視点と方法によって明らかにしようとするものである。市町村合併やそれに伴う公共政策の変化をどのように評価するのかについては、まだ十分に開拓されている研究領域とはいえないが、政策現場においても地域・住民にとっても、評価手法の開発が待たれているところであり、とくに住民視点での評価手法を確立することを、本研究はめざしてきた。 最終年度である本年度は、合併とそれに伴う政策変化を、当該自治体の住民たちがどのように評価しているのかについて、全国有数の巨大合併をおこなった2市(静岡県浜松市、新潟県上越市)において、郵送法による標準化質問紙調査を実施して明らかにした(サンプル数1600、有効回収率は各地点約48%)。前年度までの研究において、合併後の自治体政策の変化の内実を明らかにしてきたが、それに対する住民の評価は、当該自治体の中でも、住民の属性や居住地域、とくに中心地域と周辺地域の間で、大きな違いがあることが明らかになった。
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