研究実績の概要 |
本研究の目的は、政府による教育・家族支援政策や労働市場政策が、経済の生産性成長を促進するかを、国際比較分析によって実証的に明らかにすることである。人的資本投資の視点から理論的モデルを提示し、1970年から現在までのOECD20カ国のデータを実証分析する。本年度は最終年度である。
本研究によって判明したことは例えば次である。家庭の所得にかかわらず高い質の教育が受けられるようなシステムを持っている国においては、人的資本の形成が進み、経済や生産性の成長が促進されるばかりでなく、所得格差や貧困が緩和される傾向がある。この結果が信頼できるものだとすれば、経済成長と平等は両立しうるということになり、例えば教育などの人的資本投資や福祉政策に積極的な北欧の政策ミックスが有望であるということになるかもしれない。また、教育と家族支援政策支出は生産性成長にプラスに働く。さらに、先進国は4つのグループに分けられる: ①政府による人的資本投資が高く、全要素生産性が高い北欧諸国、②政府による人的資本投資は低いが、高い物的資本投資が高い労働生産性につながるアングロ・サクソン諸国、③中程度の人的資本投資がある程度高い全要素生産性につながるが、低い物的資本投資により労働生産性が低くなる大陸欧州諸国、④人的資本投資が低く生産性も低い南欧諸国だ。
研究結果の一部はInternational Political Science Reviewに掲載される。また研究結果は次の学会で発表された:Midwest Political Science Association (2015, 2018), European Consortium of Political Research (2017), Society for the Advancement of Socio-Economics (2015, 2016).
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