国境離島といわれる島々は、交通の便が悪く、また、自然環境の面においても厳しい地域が多い。そのため、過疎化、高齢化の進行に悩む住民、地方自治体も多い。 近年、特に安全保障の面において国境離島の存在が注目されている。安全保障面における離島の役割においては、離島に安定して住民が生活することが重要であると考える。島人が安定して暮らすための施策を国境離島と言われる沖縄県の八重山群島を事例として研究を行った。特に石垣市役所と綿密な情報交換を行い、まず、これまでの離島振興策について検証した。特に平成25年3月に策定された「石垣市海洋基本計画」に沿い、「海洋都市いしがき」を目指す同市の施策の計画について議論を行い、着実に実行されるための住民意識調査をヒアリング形式で行った。その結果を踏まえ、石垣市における海洋教育の推進策について具体的な提言を行うこととし、教育委員会および市内の三つの高等学校と協力し、海洋に関する生徒の研究発表会(八重山海洋タウンミーティング)などを開催し、海洋教育の意識啓蒙を行った。また、石垣市だけではなく、近隣の竹富町および与那国町との連携も視野に入れ、両町の町長および行政担当者、地域住民との意見交換を綿密に行い、石垣市と連携した地域振興策の推進を協議した。その結果、石垣市を訪れる110万人以上の観光客の半数近くを竹富町へも誘導することができ、地域活性化に寄与した。また、本研究を推進するに当たり、対馬市(長崎県)、北大東村、南大東村(沖縄県)下甑島、上甑島(薩摩川内市)などにおいて、地域振興策の検証を行った。その結果は、「国境の人びと 再考・島国日本の肖像」(山田吉彦 2014 新潮社)にまとめ公表した。 また、本事業の成果は、沖縄県における海洋資源の有効利用策として検討材料に加えられている。
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