研究実績の概要 |
悪性腫瘍(癌)は、生涯にわたり約50%の人が罹患するとともに、死亡原因の約30%を占めている。悪性腫瘍に対する治療法の一つである放射線治療は、他の治療法の適用が不可能な場合に採用されていた時代もあったが、機器の高性能化・高精度化および治療法の進歩により、最も効果的な治療法として選択されるケースも少なくない。放射線治療において、広く実施されている分割照射法について検討を継続した。はじめに、放射線に対する腫瘍および正常組織の生存モデルを詳細に検討した。LQモデル、USCモデル、さらには腫瘍の増殖を考慮したモデルについてそれぞれの特性を比較検討した。USCモデルは、比較的、臨床およびこれまでのデータに合致していた。 また、危険臓器(障害を受けると危険な臓器)への放射線の分布についてDVH(dose-volume histogram)から導出した密度関数を用いて、危険臓器へのEffectを生存率の期待値の対数に-1を乗じたものとして定義した。これにより、最適な照射回数を求めるための問題を設定し、公開されている実データに適用した。 研究課題における最終年度であるので、研究成果を国際的なジャーナル(Medical Physics, Impact Factor 2.635) へ投稿をするとともに、将来への問題設定などを記述した論文を投稿した。これらの論文は、すでに発行されている。また、啓蒙的な講演(IASC-ARS)を実施した。
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