研究課題/領域番号 |
25540012
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柳原 宏和 広島大学, 理学研究科, 准教授 (70342615)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 情報量規準 / モデル選択 / 大標本高次元漸近理論 / 有効性 / 一致性 |
研究実績の概要 |
正規性を仮定した多変量線形回帰モデルにおいて,期待カルバック=ライブラー (KL) 距離に基づくロス関数を最小にするモデルは真のモデルか,必要な説明変数が不足している underspecified モデルであり,標本数だけを大きくする漸近理論である大標本漸近理論と標本数と目的変数ベクトルの次元数を共に大きくする漸近理論である大標本高次元漸近理論ともに,ロス関数を最小にするモデルは漸近的に真のモデルになることがわかった.KL 距離に基づく予測誤差は,ロス関数の期待値として定義されるため,予測誤差を最小にするモデルは漸近的に真のモデルになる.この結果により,有効性を持つ規準量は一致性を持つことがわかった.赤池情報量規準 (AIC) とベイズ情報量規準 (BIC) はモデルの当てはまり具合を測る最大対数尤度のマイナス2倍にモデルの複雑さに対する罰則項を加えた形で定義される情報量規準であり,そのような規準量の族をLog-Likelihood-Based Information Criterion (LLB-IC) と呼ぶ.このような族に属する規準量において,有効性を持つための罰則項の条件も明らかにした.その結果から,有効性を持つための条件は,一致性をもつための条件よりも少し強い条件が必要であることがわかった.さらに具体的な規準量においては,大標本漸近理論の下では,BIC・Consistent AIC (CAIC)・Hannan-Quinn Criterion (HQC) は有効性を持ち,AIC・corrected AIC (AICc) は有効性を持たないこと,また大標本高次元漸近理論の下では,AIC・BIC・CAIC が有効性を持つためには条件が必要であるが,AICc や HQC ではそのような条件が必要ないことも分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画では,(1) 予測誤差をKL 距離の意味で最小にする規準量を有限標本の下で明らかにする,(2) 大標本高次元漸近理論の下で一致性を持つ情報量規準を明らかにする,(3) 高次元漸近理論に基づく漸近予測誤差をKL 距離の意味で最小にする規準量を明らかにすることが目標であった.(2) に関しては25年度で目標を達成している.26年度では,(3) に関しては目標を達成することができたが,(1) に関しては完全に達成することはできなかった.しかしながら,理論的には問題は解決していないが,数値的に小標本,中標本,大標本で予測誤差を小さくする規準量を探し出した.この結果は,多変量線形モデルに限定した結果ではあるが,その他のモデルでも概ね同じような傾向を持つことが予想される.以上により,概ね順調に研究計画が進んでいると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように,26年度までの目標は概ね達成しているので,27年度の目標である,(1) 次元数が標本数を超えている場合での情報量規準の一致性に関する条件を求めることと,現在少しおくれている,(2) 予測誤差をKL 距離の意味で最小にする規準量を有限標本の下で明らかにすることを中心に研究を行っていく.(1) に関しては,現在得られている漸近理論の結果がまったく利用できないので,新たに結果を得る必要がある.本質的には,分散共分散行列にスカラー行列を加えて正則性を保証したリッジ型分散共分散行列の行列式の確率収束先が必要となる.そこでまず,この確率収束先を明らかにし,その後,罰則項の条件を求めることにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
飛行機の料金の変動で価格に差異が出て残ってしまった.金額がさほど多くないので無理して使用するよりは次年度にまとめて使用する方が効率的であると判断した.
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次年度使用額の使用計画 |
必要な文房具とPCに関する消耗品に使用する.
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