正規性を仮定した多変量線形回帰モデルにおいて,一致性を持つ情報量規準は多く提案されている.一致性は漸近的な性質ではあるが,有限標本においても,ある程度の大きい標本数があれば,一致性をもつ情報量規準は真のモデルの選択確率が高くなることが期待できる.ところが,そのほとんどは標本数だけを大きくする漸近理論である大標本漸近理論により選択確率を評価している.一方で,目的変数の次元数が大きいデータである高次元データの解析の需要が高まっている.大標本漸近理論により一致性が保証された情報量規準を高次元データに適用すれば,十分大きな標本数の下でも,真のモデルを選ぶ選択確率が極端に小さくなることが頻繁に起こる.それは,大標本漸近理論に基づいた選択確率の漸近近似の精度が非常に低くなることが原因である.そのような精度の劣化は,大標本高次元漸近理論により選択確率を評価することで回避できる.大標本高次元漸近理論により一致性が保証された情報量規準は,ある程度の大きい標本数があれば,たとえ目的変数の次元数が大きくても,真のモデルの選択確率が高くなることが期待できる.ところが,大標本漸近理論・高次元大標本漸近理論のどちらでも一致性を持つ情報量規準はなかった.そこで,大標本漸近理論・高次元大標本漸近理論のどちらでも,またどのような真のモデルでも一致性を持つ情報量規準を提案した.
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