研究課題/領域番号 |
25540014
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
中村 剛 中央大学, 理工学部, その他 (80039586)
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研究分担者 |
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
山田 知美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60363371)
牧江 俊雄 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (80435891)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 毛髪ミネラル / アトピー / 統計解析 / リスク解析 / 数理モデル / True-equivalent sample / SIMEX / 測定誤差 |
研究概要 |
研究開始6年後にオリジナル標本集団(834母子)全員に郵送によりfollow-up調査への参加を依頼し、208名から再度子供の毛髪サンプルを採取した。一方、オリジナル集団から母78例を無作為に抽出し当初測定したのと異なる毛髪を抽出した。全ての毛髪の検体を作成し(長崎大学)、PIXE法により毛髪ミネラル量を測定し(岩手医大)、検証後(中村、牧江)、全ての情報をEXELファイルに落とし込み(三重大学)、JMP及びRにより解析した。PIXE測定環境の違いによる較正 (Calibration) のための数理モデルを構成した。 Atopyのリスク計算に用いられたSeとSrのうち比較的に値の大きいSrについて解析方法を開発した。PIXEによる測定限界値は0.1~1とされているので、0.1以下を0.1と変換し平方根変換したところ、母子ともに近似的にWeibullモデルに従い、個人内分散はそれぞれ0.17, 0.19であった。これを元に、オリジナル集団での測定誤差を推定し、オリジナル集団での測定誤差が無かった時の(真値の)Weibull分布のパラメター値を推定し、それに従う乱数を発生しTrue-equivalent sample(TES)と名付けた。アトピーと非アトピーのTESをLogisticモデルにより分析したところ、回帰係数の値は0.66となった。これはオリジナル集団での回帰係数の値0.465の誤差による偏りを修正した値である。一方SIMEX法(Stefanski et al JASA)による修正推定値は0.6であった。一方母におけるアトピーと非アトピーのTESをロジスティックモデルにより分析したところ、回帰係数の値は-0.45、SIMEX法による修正推定値は-0.48であった。TES推定値が信頼できる点が議論された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分担者間の業務分担がスムーズで、起こり得る様々な障害を未然に防いで、86例の母の2回測定ミネラル量及び208例の子供の2回測定ミネラル量を得ることができ、統計解析用ファイルが構成された。統計解析は当初バラツキの余りの大きさに困難であったが、様々な変数変換とモデルの試行錯誤的解析と専門家同士の意見交換により、毛髪ミネラルに適した数理モデルを開発した。そのモデルに基づく解析により、今年度の目的の一つであった、Srの個人内分散の推定値を得ることができ、それを用いて、真値の分布を推定した。多くのミネラルはSrと同様に解析可能と考えるが、Seについては測定限界0.1以下の値が大半のため、特別な変換あるいはモデルを必要とする。Seに適した変換とモデルを構成できれば、事実上全てのミネラルの統計的性質が明らかになる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
毛髪ミネラルを医学研究に普及するためには、統計学的特性を明らかにする必要がある。とりわけ、最大の障害とされているのは個人内分散が極めて大きく、再現性に乏しいとされている点である。本年度は、毛髪ミネラル測定値の個人内バラツキを詳細に分析し、Case-Control研究を実施することである。個人内バラツキの発生源毎の寄与量を特定するために、オリジナルサンプル(843母子)の残された毛髪から、アトピー有全員41名とアトピー無から41名を無作為抽出し、母と子それぞれについて、2つの検体を作成し、各検体の異なる位置を2回測定することにした。これらのデータに分散分析を適用することにより、母子間、個人間、頭部上毛髪間、毛髪内位置間による分散を推定することが可能になる。実際にサンプリングは終了し(長崎大)、PIXEによるミネラル量を測定し(岩手医大)、測定結果から解析用ファイル作成(大阪大)を行っているが、いくつかプログラムエターに基づく変換ミスが存在することが判明し現在対策を考慮中であるが、一月以内に完全な解析用ファイルがえあられるはずである。その後分散分析あるいは不揃いになった場合には重回帰モデルにより、誤差分析を行う。その結果をもとに、Case-Control研究のサンプルサイズと検出力の関係を推測し、シミュレーションにより検証する。成果をまとめて報告書を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
世良先生(143千円):昨年度のうちに必要な備品・消耗品は一通り揃い、本研究課題のための測定を進めることができたが、2年目の本年度は、分析の精度管理のための灰化容器の購入、また分析後の試料の損傷と分析精度の関係を精査するための顕微鏡を購入する予定であり、まとまった金額が必要であると判断したため、一部の予算の繰越を行った。 山田先生(150千円):子供の毛髪検体の多くが充分な毛髪量を有していなかったため、貼り方を工夫して何度かやり直したりすることで、測定に遅延が生じ、解析用データ作成までに想定外の時間を要している。このため、研究打ち合わせ回数が予定していたよりも少なかった。その分次年度(最終年度)に必要になる旅費を確保するために繰り越した。 世良先生:毛髪分析は「無調製・無標準法」で行われるが、試料測定器周りの条件を保ち、精度を維持する目的で定期的な「硝酸灰化・内部標準法」による結果との比較が必要となる。そのため7月中に灰化容器(1セット2万円ほど)を消耗品として複数購入する予定である。また、毛髪の太さ・試料の量等の条件により、測定中の毛髪の損傷の度合いは異なる。測定前の試料の状態を把握、測定後の試料の観察、毛髪損傷が分析結果に与える影響を調べる目的で、顕微鏡を購入をする。 山田先生:東京・岩手・長崎の共同研究者との毛髪ミネラルデータ較正法と統計解析結果の解釈と学会発表・論文化に関する打ち合わせのための旅費に用いる。
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