研究課題/領域番号 |
25540014
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
中村 剛 中央大学, 理工学部, その他 (80039586)
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研究分担者 |
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
山田 知美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60363371)
牧江 俊雄 独立行政法人国立循環器病研究センター, その他部局等, 研究員 (80435891)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 毛髪ミネラル / 個人内分散 / 個人間分散 / 物理測定誤差 / 疫学利用 |
研究実績の概要 |
研究の内容、意義、重要性:微量元素(trace elementsまたはミネラル)はビタミンやホルモンのように生体制御に不可欠な物質として機能しており、全ての病気や生体現象と何らかの因果関係があり、体内の微量元素の測定で物質代謝異状を察知し病気を予見することができるはずである。しかしながら、微量元素と生体現象の関連は生命科学の未踏査領域であり、治療・予防に応用されるまでには幾つもの解決すべき問題がある。本研究は毛髪ミネラル量の医学・疫学への応用の障害とされてきた問題点を解決する統計学的観点からの汎用的対策を講じることで、微量元素量の医学、疫学利用法を確立することを目的とするもので、医学的意義及び統計学的重要性は極めて高い。具体的には、PIXE (particle induced X-ray emission)法により測定された毛髪中微量元素の個人内及び個人間バラツキなどの統計学的基礎情報を得るための実験計画を立て、実際にデータ収集と統計分析を行い次の結果を得た。S, Zn, Ca, K, Fe, Cu, Na, Sr, Pb, Si, Cl, Ti, Brについては、対数変換することで、線形モデルに適合することを発見したので、測定値の分散を、個人間分散と、個人内分散に分解し、さらに個人内分散を位置による分散と物理測定誤差による分散に分解することに成功した、また個人別平均値の個人間分布も、ミネラル毎に正規、対数正規、ワイブル分布等に特定できた。Se, Hg, Cr, Niについても測定値の分散を個人間分散と、個人内分散に分解でき、さらに個人別平均値の個人間分布も特定できた。たが、個人内分散が大きすぎてそれ以上の考察は困難である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的の達成度:PIXEで測定可能な32元素はそれぞれに独特のバラつきと医学的意義を有するため、まず数個のミネラルについてバラつきの理由と量を明確にできることを目標とした。しかし、ミネラルの統計学的特性はよく類似しており、結果として、3つのカテゴリーに分類できることが有効なことが判明した。(A群)S, Zn, Ca, K, Fe, Cu, Na, Sr, Pb, Si, Cl, Ti, Br;(B群)Se, Hg, Cr, Ni;(C群)それら以外、である。A群は測定値が0になることは稀で、個人の独立な2回の測定値の散布図がラッパ型になるので、対数変換することで、近似的に線形回帰モデルに従う。また測定値とともに得られる物理誤差推定値も比較的正確で、個人内分散を位置による分散と物理誤差分散に分解できる。さらに個人間分布の特定もできたので、正常値の設定は直ちにおこなえるし、実験計画も立てられる。B群のミネラルについては、個々の測定値は個人内分散が大きすぎるので信頼できないが、2回の差は正規分布に従い、また2回の平均値の分布は特定できるので、2回の平均値は信頼できると結論した。以上の成果は毛髪ミネラルの医学疫学での利用を強力に推進する画期的成果と考える。以上により、当初予想した以上の成果を得宇rことができた。ただし、C群のミネラルは測定限界以下(0.1ppm以下)または0が大半のため、連続量に基づく統計解析は困難につき、今後の研究に待つ。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方法:ここまでの研究成果を5月末にバルセロナで開催される6th International Conference on Risk Analysisで発表することが決定している。その後は、C群のミネラルの扱い方を研究すると同時に、A群とB群での成果をもとに医学疫学の具体的分野での応用法を明らかにし、論文にまとめて投稿する。本研究新鋭時には混沌としていた毛髪ミネラル量の統計学的特性の一端を解明できたことは望外の成果である。今後毛髪ミネラルの医学疫学での利用を期待している研究者との交流を深めることで、新たな挑戦課題を探ることが一層の推進を促すと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015/05/26-29にバルセロナで開催される国際統計協会(ISI)主催の6th International Conference on Risk Analysis (ICRA6)に毛髪ミネラル研究成果を投稿中であった。以前から毛髪ミネラル研究の成果を同学会で発表し論文化してきた。最新の論文は今年2月にSpringerから出版される単行本にAcceptされている。当初はISI本大会(ブラジル)に投稿予定であったが、締切日の2014夏に間に研究成果が合わなかったので、止むを得ず国内発表だけで終わる覚悟でいたが、継続によりICRA6での発表が可能ということを知り延長申請することにした。 継続により、分担者も同学会に参加可能となり、ミネラル測定法の改良(物理学)と医学利用(医師)も推進出来るので著しい進展が可能となると考えた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記国際学会に参加並びに発表するための旅費が主である。外国旅費は25万円程度と見込んでいたので、X線スペクトル分析精密化を目指した研究のための国内旅費も予定していたが、国際学会主催者との今後の方針並びに研究打ち合わせのために滞在が伸びる予定のため、繰り越し分は外国旅費でほぼ使い切る見込みである。
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