コンピュータグラフィックスを用いた視覚的アート(メディアアート)を容易に制作するためのプログラミング環境の構築を目的として研究を行った.そのためのアプローチとして,制約プログラミングを導入した.既存のメディアアート制作環境は命令型プログラミングに基づいており,図形要素の座標などを計算する手順の記述を必要とするため,メディアアート制作者にとって敷居が高い.一方,制約プログラミングは高水準な数式や論理式などを扱うことができ,より直観的なプログラミングが可能になる.本研究ではメディアアート制作のための制約プログラミング技術と制約プログラミング言語を開発した. 平成28年度には,前年度に開発した制約プログラミング言語で利用するための制約プログラミング技術の開発を進めた.本言語は,命令型プログラミングで使われるイベントの概念と,制約プログラミングで使われるガードの概念を利用することで,これら2つのプログラミング方式を統合している.プログラムの実行は,制約プログラムを処理するフェーズと,命令型プログラムを処理するフェーズが交互に動作することで進められる.本言語の実現には,制約プログラムを扱う制約処理系が必要であり,そのためのアルゴリズムが必要である.本研究では特に本言語でサポートする常微分方程式制約と単方向制約を扱うアルゴリズムの開発を進めた.また,本言語の応用対象であるメディアアートに関する技術開発も行った.
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