研究課題/領域番号 |
25540032
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
會田 雅樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (60404935)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | カオス / 結合振動子 / フロー制御 / 公平性 |
研究概要 |
情報ネットワークは重要な社会インフラであり,限られた資源を有効且つ公平に活用することが求められる.本研究は,結合振動子に現れるカオスの性質を利用することでユーザ間の公平性とネットワーク利用効率を両立を目指した送信レート制御を検討するものである. TCP 同期問題とは,バッファオーバフローにより複数のフローに属するパケットの棄却が同時に起こるために生じるもので,ネットワーク資源の利用効率低下の原因となることが知られている.これを解決するには Random Early Detection (RED) の適用が有効であることが示されている.これは,転送バッファ内のパケットを決められた確率でランダムに棄却するため,パケット棄却のタイミングが同期しない.また,ウィンドウサイズの大きなフローのパケットが棄却されやすいので,公平性の向上効果も期待できる.しかし,確率的にはウィンドウサイズの小さなフローのパケット棄却は起こりうるので,公平性が十分に保てない可能性がある.本研究では,この問題の解決策として,当該年度において,まず,結合振動子に現れるカオスを利用した送信レート制御を検討し,RED と同程度のネットワーク利用効率を保ちつつ,RED に比べて極めて良好なユーザ間の公平性を実現しうることを明らかにした.しかし,この技術には,各フローの送信レートの上限値を決めることができないという問題があった.そこで,送信レートの上限値を定めずにリンク帯域を考慮した送信レート制御方式を考察してその特性を調べ,その結果を利用して逆に送信レートの上限値を与える技術を考案した.その結果得られる送信レート制御方式は,カオスの利用と分散制御による実現可能性の両方の観点から,望ましい性質を備えていることが期待できる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フロー制御方式の検討において,各フローの送信レートの上限値を決めることができないという問題があったが,理想的なフロー制御が実現した場合の上限値を算出して,その値を利用することにより,送信レートの上限値を与える方法に技術的な目処がついたことによる.
|
今後の研究の推進方策 |
各フローの送信レートの上限値を決定する方法が適切に動作するかどうかについて,定量的な実証を行う.これにより,カオスを利用したフロー制御技術の具体化を進めていく.
|