研究課題/領域番号 |
25540041
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 成雄 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40292619)
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研究分担者 |
佐伯 修 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (30201510)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 多値関数 / 微分トポロジー / 特異ファイバー / Joint contour nets / 可視化 / 特徴解析 |
研究概要 |
本研究は,n次元空間からm次元空間への写像である,多値関数 f: Rn → Rm のサンプルデータが与えられたときに,そのデータの大局的な特徴を微分トポロジーを用いて解析し,可視化を行う手法の開発を行う.具体的には,多値関数において各関数値の逆像の共通部分として定義されるファイバーを追跡し,そのトポロジーの変化が生じる特異ファイバーを抽出するアルゴリズムを構築する.本研究は,次の5つのステップから構成される.A) ファイバーのトポロジー変化を表すグラフ構造の抽出,B) 特異ファイバーのトポロジー型の抽出,C) 特異ファイバーのトポロジー型を用いた実多値関数データ可視化,D) 複数の次元をもつデータへの対応,E) 提案手法の検証・評価. 平成25年度は,関数 R3 → R2 の離散サンプルデータに対象を限定して,本研究の技術的なチャレンジの中心である3つのステップA),B),C)について取り組んだ.実際この3つのステップに関しては,英国リーヅ大のHamish Carr 博士と共同研究により,Joint contour net を直接データから抽出することで,ほぼ解決できることがわかった.具体的には,R3の空間に四面体分割を施し,各四面体を値域R2を構成するスクリーン上に投影をする.その際,R3の構成要素である各四面体にIDを振り,スクリーン上の各画素にどの四面体IDが描かれているかの同定を行う.その後,R3の四面体分割を構成する各四面体の隣接関係を参照して,関数値の逆像の変化をグラフ構造である Joint contour net として抽出を行う.この操作は,ラスタ化処理と呼ばれるものであるが,本研究課題においては,このラスタ化処理を介した Joint contour net の構築により3つのステップに直接対応することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定されている5つのステップのうち半分以上を消化しており,今後複数の次元における多値関数データの可視化が対応できれば,概ね全体を達成できたことになるため.研究成果の投稿論文も現在進めており,今年度内には論文が採択される可能性が高く,成果の対外発信についてもある程度進められていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,先に記した通り,複数の次元における多値関数データの可視化について,研究を進めていく予定である.具体的には,いままで取り組んできた関数 R3 → R2 の場合に加えて,R2 → R2 の場合,R3 → R3 の場合についても実装を進めたい.さらに,定義域が一般的な次元である場合を含む Rn → R2 や Rn → R3 の場合についても検討を進めていきたい.値域の次元が一般的な場合は,技術的な困難が予想されるためここでは研究対象としては含めないが,今後の拡張を睨んだ考察については進めていきたいと考えている. もう一つは,一般的な関数離散サンプルデータの解析,可視化に限定せず,Joint contour net をデータの特徴を表すキーととらえた,データ検索の道筋についても検討を加える.具体的には,画像や形状に対して,特徴量を表す2つ以上の関数を導入して各コンテンツを特徴付け,そこから Joint contour net を計算して,コンテンツ検索に用いる手法を考えていきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画通り,2年間の研究計画として,1年目がほぼ予算案通り執行を進めることができた.そのため,2年目も使用できる予算がある状況で,今後残りの研究課題について進めていく予定である. 全体の5つのステップのうちの,最後の2つのステップについて中心に取り組んでいくための予算として利用する.物品費としては,最終的な計算結果をまとめるために必要な計算機環境の整備,旅費については英国リーズ大における研究打合せと,学会出席のための費用を計上している.これに加えて,必要に応じて謝金・人件費やその他の経費などの使用を計画している.
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