【1】弾性体モデルの実時間シミュレーションにおいて,モデルが平坦になるまで押しつぶされた状況でも安定して計算を継続できる数値積分法を開発した.特に平成27年度は詳細な追加実験を行った上で,論文を完成させた.この論文は論文誌に採録済みである. 【2】平成26年度に,片側接触力とクーロン摩擦力を受ける力学システムを,ラグランジュ未定乗数を含んだ簡潔な運動方程式として定式化する手法を考案した.平成27年度は詳細な文献調査を行った上で理論体系を確立し,論文を完成させた.この論文も論文誌に採録済みである. 【3】弾性体が他の物体と面で接触し,高速な転がりと滑りが発生する状況のシミュレーションは,節点毎に接触力を計算する方法では実現しにくい.この状況の例として,自動車のタイヤに焦点を絞り,以前提案した柔軟体モデルの改良を行った.いくつかの非線形項を付加することによって,提案モデルの算出結果を実験式の算出結果に近づけることができることが示された.この結果は学術講演会で発表済みである. 【4】研究代表者はかねてより,ひもなどの柔軟長尺物体のシミュレーション手法を考案してきたが,この手法を拡張し,薄膜状物体や薄肉物体,中実物体など,幅広い幾何形状の弾性体に対応できるモデル化手法を考案した.このモデルでは,節点は質点ではなく,慣性モーメントを持つ剛体である.これらの剛体を,曲げ,ねじり,引っ張りの弾性力を発生するバネで結合することによって,格子状メッシュでも弾性体を表現できるようになった.この成果については2016年6月の学術講演会で発表予定である.
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