超小型近赤外分光測定装置を用いて、背内側前頭前野の活動の同期現象をリアルタイムでモニターするシステムの開発と、集団の脳活動、集団の作業効率、集団を形成する個人間のコミュニケーションの質と量を定量化するためのログを記録する環境の開発を行った。脳活動の相関の計算は、当初、distance correlationを用いることを予定していたが、呼吸や心拍、体動にともなう生理的信号のゆらぎ成分を排除するために、Wavelet transform coherence (WTC)を用いることにした。パイロット実験として、若年健常被験者25名が、同時に半径2mのコースを歩くときの脳活動の同調を、歩行がスムースになるようリズムを提示した場合と、何も指示をせず自然に歩行させた場合とで比較した。リズム提示したで、歩行がスムースかつ、歩行速度が速くなっただけではなく、脳活動を反映する、周期5秒から10秒の帯域で、前後して歩行している被験者の背内側前頭前野の活動が同期することを検証した。また、大学生48名を対象として、4名でしりとり課題を行わせ、背内側前頭前野の活動の同期を計測した。その結果、周期15秒から30秒の帯域で、平均WTCの値が対話密度と正相関すること、各個人の他メンバとの平均WTCも,その人の発言数と正相関 することが示された。この結果は、コミュニケーションが密なほど,この時間スケールの脳同調が強いことを示しており、このシステムを用いて、本研究の目的である、個体間の社会的相互関係を実社会環境下で脳機能計測を用いて定量可能であることが示された。
|