超小型近赤外分光測定装置を用いて、背内側前頭前野の活動の同期現象をリアルタイムでモニターするシステムの開発と、集団の脳活動、集団の作業効率、集団を形成する個人間のコミュニケーションの質と量を定量化し、社会的相互関係を実社会環境下で計測することが研究の目標であった。平成26年度は、実際に、中学校の英語の授業を行っている最中に、教師と生徒の間での、背内側前頭前野の脳活動の同期の計測を行った。50分間の授業を、最初の15分間は、生徒間、生徒教師間でポジティブかつ友好的な関係性を築くウォーミングアップ活動を行い、そののちに通常の英文法の授業を行った場合と、それを逆の順番で授業を行った場合で、教師1名とランダムに選んだ生徒9名の脳活動の同期をWavelet transform coherence(WTC)を用いて解析した。その結果、最初にウォーミングアップ活動を行った群のほうが、授業中の脳活動の同期頻度が多いことがわかった。現実の授業中の教師-生徒間のコミュニケーションの質を、こうした脳活動の同期現象によって定量化できる可能性が示唆された。また、超小型NIRSで計測する脳活動揺らぎと、個人特性との結び付きの可能性を調べる目的で、時間スケール毎の脳活動揺らぎと、性質や性格などの個人特性との関連を検討した。その結果、神経症傾向が、負の感情刺激受容時の緩やかな時間スケールの揺らぎパワー低下に相関することや、開放性の低さは、感情価に依らず課題がもたらすより短い時間スケールでの活動揺らぎ減少に相関することなどを発見した。
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