研究課題/領域番号 |
25540051
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
傳 康晴 千葉大学, 文学部, 教授 (70291458)
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研究分担者 |
小谷 真吾 千葉大学, 文学部, 准教授 (90375600)
松香 敏彦 千葉大学, 文学部, 准教授 (30466693)
牛谷 智一 千葉大学, 文学部, 准教授 (20400806)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 認知適応 / 認知モデル / 学習 / 文化 / 進化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生物の認知適応過程について、学習・文化・進化という3つのレベルに共通する基本原理を明らかにし、その基本原理に基づく計算モデルを構築することである。本年度は、各レベルにおける情報の冗長性や多様性の検討を進めるともに、フィールド分析結果を再現できる計算モデルを構築した。
(1)学習:計算機シミュレーションを用いて情報の不完全性が学習にどのような影響を与えるか検討し、不完全な情報が過学習を防ぐ効果を持つことを示した。(2)文化1:自然談話において発話冒頭要素・主題の「は」・節末助詞を冗長に引き延ばす現象を分析し、音韻論的・統語的な要因に加え、認知的な要因がしばしば関与していることを明らかにした。(3)文化2:パプアニューギニアのボサビという言語集団のバナナ栽培に関する実践を分析し、フィールド調査データから文化的回復力と冗長性の関係を明らかにした。(4)進化:空間探索課題を用いてヒトとハトの種間比較研究を行い、正答位置を直接的に示すランドマークや配置だけでなく、画面全体の方向を冗長に示すグラデーション情報を利用するというハトの柔軟な方略の一部を明らかにした。(5)計算モデル:パプアニューギニアのバナナ栽培データを題材とし、気温や降雨量の変化などのリスクに「強い」栽培方略を計算機シミュレーションによって検討した。その結果、収穫量を最大化するモデルよりも無作為行動に基づくモデルのほうが不安定な環境への耐性が強く、実際のフィールドに見られる無作為的な意思決定が安定したバナナ栽培を可能にしていることを裏付けた。
以上の研究成果は、学習・文化・進化のすべてのレベルで冗長性や多様性が重要な役割を果たしていること、そのような冗長性・多様性が無作為行動から生じる可能性を示唆するものであり、認知適応の一般理論への足がかりとして重要である。
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