研究課題/領域番号 |
25540054
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
乾 敏郎 京都大学, 情報学研究科, 教授 (30107015)
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研究分担者 |
得丸 定子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (00293267)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 催眠 / 神経回路モデル / 瞑想 / 3大ネットワーク / 実行機能 |
研究概要 |
本研究の目的は、催眠技法を用いて幻覚・妄想に関するfunctional MRI実験を行い、脳神経レベルでのモデルを構築し、その妥当性について検討することである。研究成果は、こころのケア解明への新たな道を開くものであるが、作用機構と他の高次認知機能との関連性についての明確な解明はなされていない。また、それらに関する認知科学や認知神経科学的な脳のシステム的理解や、計算論的アプローチによる研究は皆無である。H25年度は、計画書に明示した仮説の検討を行うとともに、最新の認知科学および認知神経科学的知見を踏まえてより具体的なモデル構築を試みた。 催眠の導入時におけるさまざまな要因、大きな効果を持つ要因を、過去に得られたデータを基礎に体系的に整理した。催眠や瞑想の変性意識状態としての神経生理学的な意味を明確にした。また催眠の変性意識状態においては、感覚フィードバックの予測信号が前頭葉から頭頂葉へ伝達されることを阻害することにより、させられ体験的状態が作られるという仮説を検証した。さらに催眠の変性意識状態における神経科学的なプロセスモデルを考案した。特に催眠時において自己主体観の意識化に直接関与する部位への信号の抑制や物理的刺激の知覚部位ではなくそれに伴う感情を司る部位の抑制、また瞑想時におけるデフォルトモードネットワークにおけるマインドワンダリングを司る脳部位などが抑制されることを明らかにし、ネットワークモデルを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度は催眠の脳内機構のモデル化を進める計画であったが、催眠と瞑想の共通点が多く浮かび上がってきたため、これらをまとめて対比的に脳内ネットワークの検討を行った点で予想外の成果が得られたと考えている。特に計画段階では重視していなかった脳内の三大ネットワークすなわち中央実行ネットワーク、デフォルトモードネットワーク、および顕著性ネットワークの三ネットワークを基礎として催眠時や瞑想時にこれらのネットワークのどの部位があるいはどの結合が変化するかについて詳細に調査した。その結果は極めて興味深いもので、平成26年度にはこのモデル化を更に進めて、なぜこのような効果が短期間に生ずるのかといった点に焦点を当てモデル化を進め、論文を公刊したいと考えている。以上のように本年度は当初想定していた以上の成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に構築したモデルをさらに拡張するとともに、いくつかの条件下で催眠がどのような効果を発揮するかについて多面的に検討する。以下、具体的に記す。 (1)催眠と離人症の関係に関するモデル的考察 (2)脱同一化と精神疾患の関係 (3)催眠におけるイメージの役割に関する行動実験と行動実験前後の生化学検査・心理尺度検査
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