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人並み外れた才能は脳のどこに宿るのだろうか。アインシュタインが遺贈した脳は、シルビウス裂の上行部が前方に移動し中心溝と一致していた。これは、縁上回の後方部の下部頭頂葉が両側性に極端な発達を遂げていたためである。皮質機能局在論の立場に立てば、左右どちらかの下部後頭葉に天才が宿った可能性がある一方、発達した頭頂葉の両側を結ぶ脳梁や、前後を結ぶ弓状束など、情報の伝送経路を含めたネットワーク構造にこそ天才を説明する理由が隠されていた能性もある。本研究は、1万人に1人の特殊な才能を持つ天才の脳の構造画像と機能画像を撮像し対照群と比較することによって、天才の脳の特徴を明らかにすることを目的とする。
本年度は、素数判断課題を開発して数学の天才が宿る可能性のある領域を探った。12名の被験者に対して計測を行った結果、右半球優位に、島皮質の最前部の腹側と頭頂間溝外側部に有意な活動の上昇がみられた。島皮質の前方部はヒトで特に発達した領域で、その腹側にはヒトに特徴的な大型のvon Economoニューロンが存在して、他の皮質領域と高速な通信を行っている。我々は島皮質前方腹側部と頭頂葉の該当部位が下前頭側頭線維束で結ばれていることを示唆するtractographyの結果も得た。これらの領域と結合線維束が数学の天才と関連するかどうかを検討するのが今後の課題である。
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