研究課題/領域番号 |
25540060
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
椿本 弥生 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (40508397)
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研究分担者 |
徳永 健伸 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20197875)
飯田 龍 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40464276)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 文章推敲 / 眼球運動測定 / 無意識的認知過程 |
研究概要 |
本研究の目的は,文章推敲過程における潜在的認知プロセスである「寝かせ」が文章の質の改善に及ぼす効果を,学習者の眼球運動によって測定することである。寝かせは,文章推敲過程において推敲を一時中断する活動である。研究1では,非接触型視線計測装置を用いた文章推敲実験を行い,推敲中(執筆の手が止まっている「短い寝かせ」の間も含む)の視線データおよび文章の推敲ログを取得する。 平成25年度は研究1を実施した。まず研究1-1として,文章推敲方略を質問紙によって探索した。因子分析の結果,第1因子として「変化受容」,第2因子「客観視」,第3因子「現状対応」,第4因子「制約理解」,第5因子「ピア活用」,第6因子「認知資源節約」が得られた。 次に,研究1-1における高得点群の被験者を対象に,研究1-2として推敲過程の視線計測(予備実験)を行った。被験者には,非接触型視線解析装置に推敲対象の短い文章を表示し,自然な状況下でパソコン上の文章を推敲させた。さらに,論述文の段落を故意にランダムに配置した長めの実験文章を提示し,正しい順序に段落を並び替える推敲を行わせた。その結果,句読点を打つか否か,またどこに打つかという文章の表層レベルの推敲(Faigley and Witte, 1981)の際は,修正候補箇所周辺を横方向に視線が移動し,かつ大きく停留する傾向が示された。また,段落間の論理の流れを確認する場合は,1文ずつ読むことはせず,段落の頭だけを見ていくという縦方向の視線の動きが見られた。Faigleyらによれば,段落の入れ替えは文章の深層レベルに関する推敲である。今後は,実験文章のテーマや難易度を設定し,推敲にかかる状況の要因を操作した複数の群を設定し,本実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画されていた研究1について,質問紙調査および眼球運動測定実験ともに,予備調査・実験が終了している。本調査・本実験についての計画も立案されており,平成26年度に入ってすぐに本調査・本実験が行えるよう,実施計画が具体的になっている。
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今後の研究の推進方策 |
まず,質問紙調査については,被験者のカテゴリを拡充し,より詳細なデータを得る。具体的には,平成25年度は理系の大学生(1年生)のデータしか得られず,データが偏っていた可能性がある。そのため,文系や他学年などに範囲を広げ,より広範なデータ収集と分析を行う。そのうえで,文章推敲の認知的方略の構造を明らかにする。 次に,視線計測実験については,被験者に文章のテーマを与え(どのようなテーマが適切かについては,平成25年度の時点で予備調査が完了している),視線計測装置上で執筆および推敲を行わせる。執筆中は,適宜挿入質問を行い,認知過程を観察する。その後,実験者が明示的に推敲を促進する群(意識的推敲)とそうでない群(無意識的推敲)に分け,遅延状況下で再度文章の推敲を実施する。その際の眼球運動を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予備実験の際に実験者に対する謝金が発生せず,当初の見積もりよりも人件費が少なくなったため。 平成26年度は本実験を行うため,被験者の人数も増え,また確実に謝金を発生させることになる。繰り越した金額は,実験における被験者の謝金として活用したい。また,質問紙調査のデータ入力に際して,謝金が発生する。これに対しても,繰り越したぶんを利用したい。
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