本研究の目的は,人の指先と同じように触感を認識可能な指先型力触覚ハイブリッドセンサシステムを開発し,それをロボットに搭載して物体性状に応じた把持制御を可能にすることである.平成26年度の研究実施計画は,センサによる物体の硬さ判別や滑り検知の手法を確立することと,センサ情報に基づいて把持動作を制御することである.そこで本研究では,まず,スポンジ(アスカーC8~C35)やゴム(ショアA15~A70)の硬さ,物体の表面性状(樹脂表面)を,カーボンマイクロコイル(CMC)を分散させたシリコーン樹脂をセンサ素子とするCMC触覚センサを用いて判別する指標について検討した.提案指標によるスポンジの硬さは,アスカーCの順とは異なり,人の感じる硬さと同じ順であった.ゴムでは,提案指標と人の触感,工業的な硬さに関連は認められなかった.また,樹脂表面に押し付けたセンサ素子を水平方向に1mm程度ずらしたときのセンサ出力に注目し,水平移動開始時からピークに到達するまでの時間およびそのときの出力変化,移動開始から移動完了までの出力変化,移動完了後の出力変化という4つの指標が表面性状と相関があった.つぎに,CMCセンサと力覚センサを組み合わせたセンサシステムをロボットの指先に搭載し,そのセンサ情報に基づいて硬い物や柔らかい物を把持し動作する実験を行った.1)把持対象物の硬さを判断する,2)物体を滑らさずに把持できているか把持状態を確認する,3)把持できた物体を引っ張る・回すときの動作状況を確認する.結果として,ゴムやスポンジを掴むときにその硬さを判別でき,それを離して落とすときには滑りも検出できた.またガラス瓶を掴むときには,滑って掴み損ねる直前にCMCセンサ出力が変化し,滑らさずに把持できているかを判断できた.さらに鉛筆キャップを抜く動作では,引っ張れそう・回せそう,引っ張れた・回せたを判断できた.
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