研究課題/領域番号 |
25540068
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
延原 章平 京都大学, 情報学研究科, 講師 (00423020)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | コンピュータビジョン / 多視点幾何 / 鏡映変換 |
研究概要 |
一般に鏡の位置・姿勢をカメラによる観測画像から推定するには,形状が既知の較正用物体を計測対象の代わりに配置して撮影し,較正用物体上の3次元点とその2次元画像上での投影位置の関係から得られる拘束式を解くことで行われる.そのため本研究のようにシーン中に複数枚の鏡が存在して,較正用物体の鏡映像が複数得られたとしても,各鏡について独立に位置・姿勢推定が行われてしまう.つまり「鏡に写された較正用物体はもともと同一のものである」という制約を使用していないことになり,逆にこのように各鏡について独立に位置・姿勢を推定してしまうと,3次元形状計測の際に対象表面上の同じ場所を異なる鏡を介して推定すると,計測結果が一致することが明示的に保証されないことになってしまう. 本研究では複数枚の鏡に写された較正用物体の鏡像が,もともとは同一の物体であったことそのものを拘束式として使用し,全ての鏡の位置・姿勢を同時に推定する線形解法の構築を行うことでこの問題を解決する.これは数学的には,ある既知の点群を異なる鏡映変換(ハウスホルダー変換)によって写像し,さらにそれぞれを透視投影変換した像が与えられたときに,鏡映変換と透視投影変換のパラメータを推定することに相当する. 平成25年度は「複数枚の鏡の位置・姿勢を高精度に推定することが可能か?」の点に着目して1回の鏡映変換像のみを使用したアルゴリズムに焦点を絞って検討を行い,両面にキャリブレーション用パターンを配した専用の校正用物体を新規に考案し,鏡の位置姿勢推定アルゴリズムの基礎を構築することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,多視点画像を用いた撮影対象の3次元形状復元を,単一のカメラと複数枚の鏡を用いて行う新たな高精度アルゴリズムを構築することである.これは被写体を万華鏡のような合わせ鏡の環境中で撮影することによって,1つのカメラの画像中に無数の多重鏡映像を生成させ,それらが撮影対象を相異なる仮想視点から撮影した状態と等価であること,つまり仮想多視点カメラ環境であることを利用して全周囲の形状復元を行うものである.これにより多視点環境を用意することが難しい微細な撮影対象の3次元計測が可能となり,例えば受精卵が細胞分裂する様子を全周囲から3次元的に形状計測することが可能となるなど,これまでコンピュータビジョン分野が扱ってこなかった生命・医療分野など新たな応用へとつながることが期待できる. このような研究目標に対して,平成25年度は年度当初の研究計画の通りに直接像と1回反射像を用いた鏡の位置・姿勢推定アルゴリズムのための新しい校正用物体を考案し,これに基づいたアルゴリズムの設計を行うことができた.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は25年度に考案した校正用物体を用いアルゴリズムについての性能評価を進めるとともに,当初の計画通りに複数回反射像を用いたより高精度な鏡の位置・姿勢推定アルゴリズムへと検討を進める. これは複数回繰り返された鏡の反射結果,つまり多段の鏡映変換パラメータを推定する問題であり,平成25年度において1回の鏡映変換パラメータ,つまり実際の鏡の位置・姿勢を得ているため,単純にはこれを2回目,3回目,…と組み合わせることによって任意の回数の鏡映変換パラメータを導出することが可能である.しかしこれでは結局,鏡映変換パラメータの推定精度が撮影画像中の一部分から推定された1回の鏡映変換パラメータに依存しており,撮影画像に含まれる複数回反射像から得られる情報を活用できていない.そのため本研究では,両者を同時に利用することで,より精度の高い推定を行うことができるアルゴリズムの構築を図る.
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では研究環境の整備のために高性能カメラを購入する予定であったが,製造業者よりH26年度に次世代品が提供可能となること,また所属研究組織にて当面の基礎的検討に耐える研究環境を用意できたことから,今年度の執行を見送った. 当初計画で掲げた高性能カメラの購入に充てる予定である.
|