卵の形を輪切りにして、これを卵の頂点から観察すると真円ではなく、僅かに楕円になっている。その楕円の長軸は頭部から、尾部に沿って回転している。卵を水平に置いて任意の角度からの輪郭を観察すると卵の左右の輪郭に差が生じていることが観察される。卵を短径より頭部でバランスさせてみると、輪郭の差は指数関数的に増大する。輪郭を角度系に置き換えてみて、観察するとサイクル運動の位相(回転方向)が雌雄の識別に大きく関与しているという仮説のもとに、検証と検討を重ねていった。 卵の歪み計測で卵の捩れを検出するには立体的形状の把握が必要である。しかし卵を回転させるようなことは非実用的であるため、卵の全輪郭を捉える3台のカメラ構成による計測システムが必要と考えた。小さく安定した卵置台の設計製作とカメラ設置角度の調整を行い、位相差の計算および、さまざまな視点から卵の捻れ方向を解析し、卵の長軸を中心に360°右に回転させて撮影した画像による輪郭と輪郭歪みを計測データから検出できた。歪みや卵の傾きは、振り子の強制振動と同じリミットサイクルと近似している。この特性は産卵時に、卵の回転方向が雌雄で逆、つまり、メス卵は右に回転し、オス卵は左に回転していると想定される。 リミットサイクルは360°の撮影を行えば、雌雄を容易に視認出来ると思われるが、実用化は経費と処理時間の点で不可能である。しかし、領域区分を適正に行えば雌雄は可逆的に現れ、その可逆特性から正しく鑑別出来たことが証明できる。このような可逆特性は45°間隔で撮影した3面の画像を使えば実現出来る。3面撮影は実用化が極めて容易であると思われるので、この撮影プロトタイプシステムの構築と検証に着手したい。 採卵鶏種のオスひなが殺処分問題が解決することにつながり、鶏卵を孵化前に食料、ワクチン開発の需要に使える道が開けることになる。
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