本研究の目的は,物体と手との接触点が複数ある場合にもPseudo-Hapticsによって深部感覚を疑似提示可能な手法を確立し,多様な触り方に対応可能な視触力覚ディスプレイを実現することである.申請者らは,物体に触れる手の接触点位置を時間的・空間的に変調した映像をフィードバックすることでPseudo-Hapticsを生起し,実際とは異なる形状の物体表面に触れる感覚を提示可能なシステムを実現した.一方従来研究では,接触点が複数ある場合,変調後の接触点間の空間的整合性が崩れるため,所望のPseudo-Haptics効果が得られないという問題がある.本研究では物体と手の間の複数の接触点間の空間的整合性がとれるよう,接触点位置だけでなくて形状を自然に変形する手法を実現し,多様な触り方を許容可能な視触力覚システムの構築と実証を行う. 本年度は,昨年度までに構築してきた映像中の手姿勢をリアルタイムに自然に変形させる手法を拡張し,体験者の指がバーチャル物体の指に隠れてオクルージョンが発生する場合にも適切な視覚刺激を提示できる手法を構築した.また,実物体無しに自分の指同士が接触する感覚を用いてバーチャル物体に触れる感覚を提示する手法を提案,実現した.また,実物体を使用する手法において,映像中の物体の変形量を操作する事で実際に指にかかる圧力が変化していること,指のなぞり位置が微小に変化していることを明らかにし,Pseudo-Haptics効果を客観的な指標から検証できることを示唆した.
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