本研究ではユーザの筋電位信号から動作意図を読み取り,ロボット等の直感的な操作を可能にする筋電ロボットインタフェースについて,従来技術では困難であった動作意図-筋電位信号感の対応関係に重大な影響を及ぼす1)姿勢変化,2)発汗,3)筋疲労の要因に頑健な動作意図認識手法の確立を目的とした.このような手法の開発により,筋電ロボットインタフェースの実用性と汎用性を飛躍的に向上させる画期的な技術の確立が期待できる.最終年度である平成26年度では,前年度に開発した時間的・空間的な伸縮を許容する距離計算法に基づくパターン識別技術について,その問題点の一つであった必要計算時間を削減するために手法の改良に関する研究を行った.具体的には,時間的な伸縮の計算には動的計画法を用いていたが,その部分を近年提案されたカルバック・ライブラー(KL)制御の枠組みを用いて定式化できれば,計算量の大幅な削減が期待できる.そこで,隠れマルコフモデルなどの確率的グラフィカルモデルを用いて,連続状態空間を離散の潜在状態空間に縮約して表現し,さらに潜在空間上でKL制御問題を定式化して解く,潜在KL制御の枠組みを開発した.またその成果について,国際会議1件,国内会議1件でそれぞれ発表した.この枠組みを提案手法に組み込むことで,識別の頑健性のみならず,計算の実時間性も兼ね備えた新しい筋電ロボットインタフェースが実現出来ると見込まれる.
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