研究課題/領域番号 |
25540089
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
唐山 英明 富山県立大学, 工学部, 准教授 (00401323)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 脳波 / ヒューマンペットインタラクション / ブレインマシンインタフェース |
研究概要 |
本研究においては、イヌに適用する安全なブレインマシンインタフェースを利用したあらたなアプリケーションとして、ヒューマンペットインタラクションシステムの実現を目指している。初年度は、それまでの準備期間に行ってきた取り組みをさらに推進し、イヌの生体情報の一種である脳波を計測し、分析するための基盤技術の開発を行った。 富山県立大学における動物実験倫理審査を通過後、イヌを調達可能な協力機関を選定し、定期的にイヌを実験に利用できる体制を整えた。これには一定の期間を要したが、7月ごろまでには協力体制が確立できた。イヌの生体情報を計測する際には、センサを取り付ける必要があるが、本研究では、先行研究事例を網羅的に調査し、さらに、独自にも網羅的にその取り付け手法について探索し、頭部の適切な位置にセンサを取り付けることを可能とした。センサ取り付けの際には、頭皮の各種調整が必要であることが分かり、今回の研究でこれを確立した。これらセンサについては、新規に購入をする計画であったが、市場の動きにも鑑み、次年度、よりよい製品の販売を待つ形とし、今年度は既存のセンサを用いた実験を推進したことに注意されたい。 続いて、イヌに五感刺激を提示するコンピュータシステムを構築した。視覚、聴覚刺激を中心に検討をした結果、聴覚刺激を用いたシステムが応用の面でも適切であるとの判断により、聴覚刺激を提示した際の脳波計測を可能となるようシステムを開発した。このシステムは独自開発によるものである。得られた脳波の分析を行い、その結果、イヌの注意に関する情報が得られる可能性があることが分かった。この際、脳波からノイズを除去する処理、また、脳波の波形を加算平均する処理、さらに、機械学習を用いたパターン認識処理について調査を行った。この解析ソフトウェアについても、独自開発を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、イヌの脳波を計測し、これを分析する技術が必須である。初年度の取り組みにより、聴覚刺激を利用したイヌの脳波計測が可能であることが確認でき、また、この脳波をを分析するソフトウェアを開発することにより、イヌの注意に密接に関連する情報が抽出できたと考えられるため、達成度は高く、本研究の進捗については全く問題がないと考えている。視覚刺激については実験自体がが困難であり、次年度においては聴覚刺激を中心に研究を進めたい。 ただし、今後の課題として次の2つの事項が挙げられる。(1)初年度において実現した分析は、50~100回程度の加算平均脳波を扱うものであり、応用の観点からは、非加算処理によるリアルタイム分析が必要となる、(2)オンラインでイヌの脳波を分析し、その分析結果をヒトにフィードバックするシステムの開発が必要となる、である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、先に述べた達成度の項目における2つの課題(1)(2)に注力して、作業を進めていく。 (1)リアルタイム分析については、脳波の非加算処理を主体に高い精度が確保できるよう情報処理アルゴリズムの修正や改善を行っていく。ここで、脳波データ収集後、様々な加算平均回数における精度の検証を行うとともに、非加算での精度を向上するための取り組みに注力する。非加算処理における高い精度の確保は難しいことが予想されることから、研究の進捗により、少数回数の加算平均処理における高い精度の確保についても検討を行う計画としている。ここで、イヌの眼球運動が脳波に悪影響を与えることが分かっており、適切なノイズ除去手法を確立することも重要である。(2)さらに、リアルタイムで、イヌの状態をフィードバックする技術やシステムの開発に取り組む。フィードバックはヒト、特に飼い主に対して行われる計画であり、イヌの注意状態を可視化するソフトウェアを開発し、その動作について検証を行っていく。今後は、以上の2点を中心に目標を達成したいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本提案当初、イヌの生体情報を計測可能なセンサや装置の調達を計画していた。しかしながら、既存の装置(簡易型脳波計)によって研究を進める中で、小型無線型センサが販売されるという最新情報に触れる機会があり、この新たなセンサの性能について検討を行っている段階である。以上により、調達時期を遅らせることにしたものである。 新たなセンサや装置の選定を行っていく方向で進め、本計画を見直し、適切なハードウェアの調達とそれを用いたシステムの実装を行っていく。特に、小型無線型センサの調達が可能であるか否かについて詳細に調査を行い、システムの開発と評価を進めていく。よりよいセンサが得られない場合には、既存のセンサを増設、また信号処理用高速計算機やソフトウェアの調達を中心に行うなどにより、システム開発を推進したいと考えている。
|