本研究課題では、イヌを対象としたブレインマシンインタフェースを開発し、その性能について評価を行い、ヒトとイヌの新たなインタラクション手法(ヒューマンペットインタラクション)について調査を行うことが目的である。 イヌの頭皮に脳波を測定可能なセンサを装着し、イヌに聴覚刺激を提示した際の事象関連電位を抽出した。同時に、視覚刺激についても検討を行うため、眼球運動の計測も実施した。事前に蓄積したイヌの事象関連電位に基づいて機械学習を行い、イヌの聴覚刺激への注意惹起の有無をリアルタイムで判定可能なシステムを構築した。判定アルゴリズムにおいては、ヒトのブレインマシンインタフェースにおける事象関連電位の判定と同様の手法を採用した。 富山国際ペットビジネス学院の協力の下、イヌを用いた実証実験の結果(雌のポメラニアンを使用)、イヌの眼球運動は眼電位により明瞭に記録され、またイヌの注意惹起の判定精度は比較的高く、将来的にヒトとイヌの間のヒューマンペットインタラクションが、イヌの脳情報に基づいて実現する可能性が示唆された。 その一方で、脳波計測において覚醒時のイヌを扱う際の難しさも明らかとなり、特に、イヌの体動によるノイズが脳波計測を困難とするケースが多く見られ、今後は、イヌの体動を除去する信号処理アルゴリズムの必要性が再認識された。また、判定精度を向上させるため、判定アルゴリズムの改善などの試みも引き続き行う必要がある。
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